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ヤマガラの生態。鳴き声や餌、体の特徴などについて

2017/01/19

公園や森に行くと、よく出会える小鳥はシジュウカラとヤマガラです。
どちらも好奇心旺盛で、野鳥でありながら人懐っこい個体もいます。餌台にも現れやすく、餌付けすると手乗りになることも。
非常に賢い鳥で、野鳥が飼育できた時代には縁日で芸を披露していました。日本人と関わりの深い野鳥のひとつです。

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ヤマガラの生態と特徴

亜種と生息地について

比較的よく見かける鳥ですが、日本、台湾、朝鮮半島、中国のごく一部にだけに生息します。
離島にはそれぞれ固有亜種(ナミエヤマガラ、オーストンヤマガラ、オリイヤマガラ)が生息し、台湾にはタイワンヤマガラが生息します。離島のヤマガラはいずれも数が少なく、絶滅が懸念されています。
大東島にいたダイトウヤマガラは1922年に標本鳥を捕獲したものの、それ以降発見されず絶滅が宣言されました。
南方のヤマガラほど、羽の色が濃くなる傾向があります。
暖かいところを好む傾向があるせいか、北日本よりも西日本に数多く生息します。

留鳥または漂鳥で、低い山地から平地で暮らしています。
日本の標準的な森、常緑広葉樹林や落葉広葉樹林を好み、どこの山でもたいてい見かけることができます。
日本では植樹の影響で、戦後より広葉樹林が針葉樹の杉林に変わりました。そのため森の生態系が大きく変わってしまい、ヤマガラをはじめ多くの野鳥が住処を減らしています。
ヤマガラは減少傾向にあると言われ、環境省レッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けています。

夏は標高1,500メートルほどの高地へ移動し、冬になるとより低い山や平地に移動します。
夏でも市街地の公園などで、巣箱に営巣する個体もいます。

体の特徴

黒い頭と喉、オレンジ色のお腹、灰色の翼と、はっきりとした色合いの可愛い小鳥です。
ヤマガラの名は「山吹色のお腹のカラ」という意味。
正面から見ると、喉の黒い部分が逆三角形に広がっているのが目立ちます。漢字の「山」のように見えるので、この特徴を覚えていると見分けが付きやすくなるでしょう。
うしろの足指の爪がとても長く、枝にしっかり捕まるのに都合の良い作りをしています。

くちばしの先からしっぽの先まで13~15cmほど。頭が大きく、尾が短いので寸胴な印象があります。
オスメスとも同じ姿をしています。

日本のカラ類の中では大柄で、シジュウカラやコガラなどと比べると大きく、存在感があります。冬のヤマガラは羽を膨らませて丸くなり、さらに愛らしさが増します。
冬は公園などでも見つけやすく、西日本なら特に探さなくても散歩中に遭遇できるかもしれません。
冬になると、ほかのカラ類やエナガ、メジロ、コゲラと混群(外敵から身を守るため、別種同士で群れを作る)を作ることがあります。

鳴き声

鳴き声は非繁殖期は「ビィービィービィー」「ニーニーニー」と響きわたる声で鳴き、繁殖期には「ツツピン、ツツピン、ツツピン」など多彩な声でさえずります。
シジュウカラに鳴き声が似ていますが、鳴き方のテンポは若干ゆっくりしています。

繁殖について

ヤマガラは木の洞などに巣を作ります。巣は皿状で、コケや羽毛、獣の毛などを使ったフカフカの仕様です。
3~6月に3~8個の卵を産み、雌が卵を暖めます。12~14日で孵化し、18~20日ほどで巣立ちを迎えます。
巣立ちを迎えても雛はときどき巣に戻り、親から餌をもらうことも。
キツツキが開けた穴や、人間が設置した巣箱などにも好んで営巣します。営巣場所を増やすことが、ヤマガラの繁栄に繋がります。

カラ類は希に他の鳥の子育てに加わることがあります。シジュウカラと同じ巣で子育てをしている、珍しい生態が観察されたことも報告されています。

餌について

餌は、春から夏にかけて昆虫を主に食べ、秋になると果実を多く食べます。
春には芋虫などを補食し、夏になるとアブラゼミなど大きな昆虫をつついて食べることもあります。
ヤマガラは突つく力が強く、堅い殻を割って食べることができます。
ドングリやひまわりの種、殻付きのピーナツを食べることもあります。

特に、エゴノキという樹木の実を好んで食べることが知られています。エゴノキは落葉広葉樹の一種で、秋になると白いさくらんぼのような実を多く実らせます。
エゴノキはさくらんぼのように枝からぶら下がっていますが、堅い殻に包まれています。
ヤマガラは鈴なりに成る実から熟したものを注意深く探し、くわえて安全な場所まで運びます。
両足で実を鋏み、くちばしでコツコツつついて中身を取り出して食べます。
実のえり好みができる時期は短く、秋も深まり、エゴノキの実が減ると、地面に落ちた実を拾うことも。
地面に降りたヤマガラを観察するには絶好の機会です。

さらに、ヤマガラはカラスのように「貯食」する習性があります。エゴノキの実を地面や樹木の皮の下などに隠し、冬の餌が乏しい時期に備えます。
ヤマガラは非常に知能が高く、貯食した場所をすべて覚えていると言われています。しかし餌に困らないときはそのまま放置することもあり、貯食されたエゴノキの実は春になると芽吹き、成長します。
エゴノキとヤマガラは共生関係にあり、ヤマガラはエゴノキの実を食べる代わりに、貯食でエゴノキの生息範囲を広げます。

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注意点

ヤマガラは人に懐きやすく、餌を与えれば野生でも簡単に手乗りになります。
殻付きのひまわりの種を与える方が多いですが、エサは指先近くに乗せたほうが誘いやすいでしょう。てのひらに乗せて与えがちですが、てのひらだと捕まれてしまうので、鳥も警戒してなかなか近寄りません。

しかし、野鳥である以上、あまり過剰に餌付けを行うとヤマガラが餌を探す能力を失うおそれがあります。
山に入ったバードウォッチャーに、ヤマガラやシジュウカラが近寄ってくることがありますが、これは餌付けされているため。可愛いから、撮影しやすいからとエサを与えるのは簡単ですが、それは本当にヤマガラにとって良いことかを考える必要があります。
どうしても与えたいときは、エサが乏しい極寒にごく少量与える程度に止めたほうが良いと思います。

餌台に出す餌の量も、あまりにも多すぎるのも問題です。ヨーロッパは日本以上に愛鳥活動が盛んですが、冬場にエサを与えすぎて小鳥の数が増えてしまい、問題になったことがありました。
適量を決めて、少量出す程度に止めましょう。
どうしても野鳥を身近に呼びたいなら、バードバスがお勧めです。野生には安心して水浴びできる場所は少ないので、バードバスを作ると喜んでやって来ます。
ただ皿に水を張るだけだと、鳥が足を滑らせて溺死することがあります。皿の底に滑り防止用の小石などを敷き詰め、常に清潔に保ちましょう。
猫などに襲われない高さに作り、タカなどが狙いにくいように屋根を付けるとより安全です。

ヤマガラ用の巣箱をかける際は、入り口に同じ直径の穴を開けた透明アクリル板を貼り、保護すると安心です。
ただの巣箱だと、キツツキが穴を開けて巣を乗っ取る恐れがあります。

ヤマガラと芸能

現在は鳥獣保護法で禁止されていますが、ひと昔前までは野鳥を捕獲し、飼育することはよく行われていました。
ヤマガラはペットとしても人気があり、平安時代から飼育されていた記録が残っています。
ただ飼うだけでなく、様々な芸を仕込み、見世物として披露することも行われていました。

80年代までは祭りの境内の見世物でも一般的で、様々な芸をこなしていました。
お神籤の束から一つ持ってくる「おみくじ引き」、エサを入れた小さなつるべ(井戸から水を汲み上げるバケツ)を紐をたぐり寄せて取る「つるべ上げ」、小さな鐘を突く「鐘つき」、カルタを1枚取ってくる「かるたとり」、サーカスの猛獣のように輪をくぐる「輪ぬけ」、固定した小さな矢を射る「那須の与一」など、様々な技がありました。

明治10年に来日したアメリカ人、エドワード・S・モースは浅草でヤマガラの芸を見物し、記録に残しています。
小さなお宮の鈴を鳴らし、お賽銭を入れる「お宮参り」、複数のヤマガラが太鼓や三味線をつついて音を鳴らし、鈴を振り回して演奏する「楽器演奏」など、多彩な芸が行われている絵が描かれています。
日本最古の遊園地、浅草公園花屋敷でも、当時の宣伝チラシ(引札)で「山がら奇芸」と称し、様々な芸が紹介されていました。
猿回しのように、綱渡りをしながら小さな番傘をさす姿、竹の棒(巫竹 ぜいちく)を引く占いなどのイラストが描かれています。
中には馬に乗るヤマガラの絵もあるので過剰演出かもしれませんが、非常に多くの芸をこなしていたのは間違いありません。
一見すると複雑な芸ですが、これらはすべてヤマガラの生態を利用したものです。

しかし野鳥の捕獲禁止などの法律が制定され、これらの技は1990年ごろに消滅しました。
ヤマガラの芸は日本の伝統芸能の一つでしたが、鵜飼いのような芸能集団がいなかったため、保護することができませんでした。(日本の鵜飼いの鵜は、野生のウミウを捕獲したもの)
伝統芸能や文化に限り、保護生物の捕獲や殺傷が許可される場合もあります。現在でも保護鳥のヤマガラに芸を仕込んだ例もあるので(現在は放鳥済み)猿回しのように、ヤマガラの芸が正式に復活する日が来るかもしれません。

日本では鳥のおみくじは廃れましたが、台湾では現在も日常的に行われています。
台湾では白文鳥がおみくじを引いてくれます。文鳥は虫を食べず、米や稗など高貴(とされる)なものだけを口にする霊鳥で、賢く神に通じる力があると言われています。
おみくじ引きは鳥のご機嫌次第なので、引いてくれないことも。それも醍醐味の一つだと思ったほうが無難です。
メキシコでもカナリアが同様の方法で「小鳥占い」を行う地域があります。

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