食用だった!ツグミ(鶫)の生態について!どんな鳴き声?
2016/10/14
ツグミは林や街路樹などで見かける、「小鳥」と呼ぶには少し大きめな鳥です。
代表的な冬鳥で、大柄な姿と美しい羽色、特徴のある仕草に愛好者はたくさんいます。
一方で果物などを好み、果樹などを襲うため農家にとっては厄介な鳥でもあります。
かつては、かすみ網でツグミを捕獲し食用にしていた時期もありましたが、現在は捕獲は全面禁止です。
生態
生息地
ロシア北部や東部、中国、ミャンマー北部で繁殖し、冬には日本や台湾、中国南部に渡ります。
秋ごろから日本各地のあちこちで見られる、比較的ありふれた鳥です。
10月ごろに集団でシベリアから渡ってきたツグミは、まずは山の森でしばらく集団行動を行います。
徐々に分散して平地に移動し、里山や農耕地、草原、都市部で冬を越します。落ち葉が積もる冬の公園で、胸を張って歩きながら食事をしているツグミの姿はよく見られる光景です。
秋の終わりの青森で、収穫されなかった痛んだリンゴめがけて集団で食べにくる姿は、なかなか壮観です。
翌年の3月ごろには再び群れに戻り、繁殖のためシベリアへ渡っていきます。
特徴
スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥です。
漢字では「鶫」と書きますが、難読漢字で読み方が分からないことも。
くちばしの先からしっぽの先まで24cm、翼を広げると39cmと、小鳥の中では比較的大柄です。
亜種にハチジョウツグミがあり、ツグミに比べて全体的に赤いのが特徴です。
シベリアで繁殖し、ごく少数が日本に越冬のためやって来ます。八丈島で捕らえられたので、この名が付きました。
ツグミの羽の色は個体差が激しいですが、大まかな特徴は以下のとおりです。
- 頭頂から首の後ろは黒褐色
- 目から頬にかけて、茶色の過眼線
- 背中は褐色
- 喉から胸にかけてクリーム色
- 胸に斑点がある
特に胸の斑点は個体差が激しく、白いお腹にウロコ状の黒褐色の斑点、褐色のお腹に白い線など多彩です。
斑点も一面に出ていることも、一部に集中していることもあります。
お腹の斑点を見ると、ある程度の個体識別ができます。
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鳴き声
ツグミの鳴き声は地味で、「ジジッ ジジッ」と鳴きます。冬は地鳴きしかしないので、美しいさえずりは期待できません。
「冬には口をつぐむ鳥」と言われ、これがツグミの語源になったと言われています。
餌
雑食で、柿やネズミモチなどの木の実から昆虫、ミミズまで幅広く食べます。
ツグミが渡ってくる10月頃は、ちょうど秋の実りがピークに達する時期。庭の柿の木などに止まり、美味しそうに食べる姿も珍しくありません。
実を食べ尽くした冬は地上に降りて、落ち葉をかき分けて昆虫やクモ類、ミミズなどを探しています。
2、3回跳ねては胸を張り、周囲を見回してから地面をつつき、また2、3回跳ねて胸を張り、という仕草は独特で、ツグミの特徴です。
警戒心が強いため、入念に周囲を警戒しながら、安全第一でエサを探します。
注意点
日本では現在でもツグミを食べる習慣がある地方があります。現在でも密漁が続く地域もあり、大きな問題になっています。
海外で捕獲されたツグミの冷凍品が販売されることもあるそうです。
しかし、ツグミは日本では捕獲を厳重に禁じています。絶対に捕獲しない、捕獲を見かけたら即通報を心がけましょう。
鳥獣保護法違反は大きな罪で、鳥を傷つけたり殺すと懲役1年以下または100万円以下の罰金という罰が待っています。
海外で捕獲されたツグミも、生きていればやがて日本へ渡って来るはずだった鳥です。
食習慣を断ち切るのは文化の継承を断ち切るという面もありますが、現在の日本では野鳥に関しては文化継承よりも野鳥の保護を優先させています。
たとえ海外で捕獲された合法的な野鳥でも、飼ったり食べるのは厳に慎むべきでしょう。
果樹を荒らす害鳥でもあるため、鳥よけネットで防衛することは必要です。
しかし、ツグミがネットに絡まってしまい、逃げることができず死んでしまうことがあります。できるだけ見回る機会を増やして、ネットに引っかかった鳥がいれば離してやりましょう。
エピソード
飛騨(岐阜県)にツグミ狩りの昔話「亡者道」が伝わっています。
御嶽山のふもとにある乗鞍岳のある村に、平十朗という度胸のある男がいました。
平十朗は秋の終わりにかすみ網でツグミを捕まえるのを楽しみにしていました。
御嶽山に連なる亡者道(もうじゃみち)と呼ばれる場所にカスミ網を張ると、たくさんツグミを捕まえることができました。
しかしツグミの反撃に遭い、片目を突つかれてしまいます。
実はこの地域は祖父もかつてツグミ狩りを行っていた場所でした。
しかしツグミに片目を突かれて失明し、しかも亡者に襲われたから決して亡者道で狩りをするなと警告していました。
しかし平十朗はそんな警告を無視して、亡者道で狩りを行っていたのです。
小屋で休んでいると、いきなり壁を叩く音がします。何事かと思うと、壁の穴からツグミが次々に入り込み、小屋の中でバサバサと大量に飛び回ります。
仰天した平十朗は外に飛び出すと、今度は火の玉が目の前を通り過ぎます。
度胸のある平十朗は火の玉について行くと、自分が仕掛けたかすみ網に火の玉が無数に引っかかり、うめき声を上げていました。
やがて、火の玉はドクロに姿を変えて「平十朗をとろう、平十朗をとろう」と口々に叫びます。
このままではドクロに捕まってしまう、と恐怖にかられた平十朗は慌てて逃げますが、沼にはまってしまいます。
なんとか亡者から逃れることができましたが、さすがに懲りて二度とツグミ狩りをすることは止めてしまいました。
実はこの亡者道は、霊山と言われる御嶽山が死者を迎えるための道でした。
死者の道にカスミ網を仕掛けたことで道をふさいでしまい、通行を妨げていたのです。
亡者道で殺生を行ってはいけないという、戒めを込めた昔話です。
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