ツバメ(燕)の生態♪巣作り~子育て、餌、保護した時の対処
2021/03/01
春になると、黒い小さな翼の小鳥がやって来ます。商店街など軒先に鳴き、いつの間に泥で出来た巣を作ります。
商店の地面に新聞紙などを敷いて注意書きする光景も、すっかりお馴染みです。
ツバメは日本では最も馴染みがあり、最も愛される鳥のひとつです。
農家にとっては害虫を食べてくれ、町中でも小さなツバメの子たちは癒しになります。
フン害を嫌がる方もいますが、ツバメが巣を掛ける場所は人の出入りが多い場所でもあります。繁盛しているバロメーターだと思って、暖かく見守りたいものです。
生態
生息地
ユーラシア大陸、アフリカ大陸、南北アメリカ大陸など、主に北半球の広い地域に分布しています。
日本には夏に子育てのためにやって来る、代表的な夏鳥です。フィリピンやマレー半島、ジャワ島、ボルネオ島で冬を越したグループが日本にやって来ます。
北海道から沖縄まで、全国各地で子育てを行います。
食性
※羽虫を捕食中のツバメ↑
完全に空中に適応した体で、羽虫だけを食べて生きています。そのため、羽虫がいない場所では生きていけません。
逆に言えば、羽虫さえいれば冬でも問題なく暮らしていけます。
日本では西日本などを中心に、少数の越冬ツバメがいます。冬の夜は集団で眠り、お互い暖を取り合っています。
鳥にとって、渡りは命がけの大冒険。冬でも食べられるなら、わざわざ渡りをしなくても留まることは珍しくありません。
種類
日本に来るツバメは、町中でよく見かけるツバメ、腰が赤いコシアカツバメ、岩場やビルなどに営巣するイワツバメ、北海道に飛来し、崖に穴を開けて巣を作るショウドウツバメなどがいます。
琉球諸島や奄美諸島には、留鳥のリュウキュウツバメが生息しています。
海などで暮らすアマツバメは、ツバメとは別の種類の鳥です。生活様式が全く同じなので、よく似た外見に進化しました。
特徴
くちばしの先からしっぽの先まで17cm、翼を開くと32cmの小型の鳥です。体のわりに翼が長く、何千キロの渡りに適応しています。
切り込みの深い、二股の尻尾が特徴的。背中は藍色に近い黒、お腹は白いツートンカラーです。
翼はブーメランのように曲がった形で、急旋回が可能。羽虫を追いかけて、川へりや田んぼで飛び回ります。
軽やかに飛び、急旋回や急上昇、急下降など多彩な動きを見せます。水浴びは、川などに軽くダイビングして一瞬で済ませます。
※水浴びの様子↓
逆に足は弱く、歩くことはできません。巣作りのためのドロ集め以外で地上に降りることは、滅多にありません。
しかし足の指の力は強いので、壁にへばり付くことはできます。巣立ち直後のツバメの子たちが、必死に壁にしがみ付いている姿を見かけることもあります。
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子育て
巣作り
人間を恐れず、軒先などに営巣します。巣はドロとわらに唾液を合わせ、固めたもので作ります。
深い皿のような巣を作ります。ツバメによって巣の形は様々で、コシアカツバメは徳利のような形の巣を作ります。
子育て
3月~8月までに子育てを行い、1年に2回ほど子育てを行います。1回で6個ほど卵を産み、ヒナが大きくなると巣が溢れそうになるほど混雑します。
ぎゅうぎゅう詰めのヒナが一斉に口を開けて餌をねだる様子は大変愛らしく、夏の商店街の風物詩です。
巣立ち後
無事に巣立ったツバメたちは、夏の終わりまで川や湖などに生えるアシ原に集います。しばらくアシ原でエサを食べて鋭気を養い、しっかり栄養を蓄えると大集団で南に渡っていきます。
渡り方
本州から沖縄諸島、台湾、東南アジアへと、島伝いに移動します。
島伝いとはいえ、諸島の間は数百キロ以上の距離があります。ツバメは海に浮かんで休めないので、その間ノンストップで飛ばないといけません。
渡りは大変過酷で、次の年に再び日本までたどり着けるツバメは11%ほどと言われています。
ツバメの渡りのルートの一部は、中東から日本に原油などを運搬する海洋路、シーレーンと被っています。
原油を運ぶためにひんぱんに行き来する巨大な船は、ツバメたちにとって羽を休める絶好の機会を与えてくれます。船員たちは巨大な船で休む、膨大な数のツバメと遭遇できるでしょう。
餌
完全な昆虫食で、カや小さなガ、カゲロウなど羽虫を補食します。
害虫を食べてくれる益鳥として、長い間愛され続けられています。江戸時代にはツバメを捕まえるのは禁止され、村全体で保護されていました。
天敵
ツバメは戦うことが苦手な鳥です。そのため天敵が多く、特にスズメとカラスの被害が目立ちます。ムクドリから攻撃されることもあり、ネコやヘビに襲われることも珍しくありません。
カラスはツバメの巣の状況をすべて記憶しています。ひながある程度大きくなるまで見守り、頃合いを見て襲うことがあります。
スズメは、ツバメの巣を乗っ取り自分の巣にしてしまいます。たまにツバメの巣からワラなどが出ていることがありますが、これはスズメが運んだ巣材です。
ツバメもスズメも人間社会の中にいますが、スズメは伝統的に人間に攻撃され続けたせいで人間を恐れます。
ツバメは、スズメが人間を恐れることを利用して、スズメ避けのために軒先などに営巣します。
まれに、家の中に巣を作ってしまうことも。ガレージに営巣することも珍しくありません。
しかし、最近は都市を中心に、景観やフン害を嫌ってツバメの巣を撤去する事もあります。
ツバメも減少傾向のある鳥です。卵を生むまでの間は撤去しても罪には問われませんが、出来れば見守るほうが良いでしょう。
保護した時は
時々、ツバメの巣からひなが落ちていることがあります。
すぐに拾って巣の中に入れてあげましょう。
しかし、それでも何度も落とされてしまうことがあります。スズメの攻撃で巣から何度も叩き落されたり、何らかの事情で育ててもらえない事があるようです。この場合は人間が育てるしかありません。
保温
まずは保温することを最優先しましょう。30℃以上に暖めた水を四角いペットボトルに入れ、タオルで包んで当てておきます。
一方で涼しい場所も作ってあげ、ヒナが自分で保温しやすい環境を作りましょう。
餌を与える場合
ヒナは肉食なので、与えるエサは昆虫が理想です。
ミルワームなどは入手しやすいですが、ミルワームは栄養に偏りがあるため、これだけを与えると栄養失調を起こします。
メジロ用のすり餌(または、肉質の高いすり餌)、ドッグフードを水で柔らかくしたものでも可能ですが、あくまで緊急用と考え、できるだけ昆虫を与えましょう。
ヒナは多くの量を食べるので、エサ探しも一苦労です。ビタミン剤など、足りない栄養分を補給することも必要です。
訓練
成長したら、エサ取りの訓練を開始します。エサを口に入れる前に上下左右に振り、刺激を与えます。
それで食いつくようになれば、ぽんと投げたり、飛んでいる虫を見せたりして補食を促します。
完全に補食できるようになれば、別れの時期です。地域によりますが、9月ごろにツバメは小さな集団を作り、10月ごろから渡りを始めます。
出来れば、この頃までに放しましょう。
エピソード
正式な礼服で燕尾服がありますが、背中から見るとツバメにそっくりです。その名のとおり、ツバメの尾が語源です。
ツバメは大変馴染みの深い鳥で、各国に民話や伝説があります。アンデルセンの童話「幸福な王子」では、エジプトに渡らず王子の願いを聞き続け、やがて死んでしまうツバメが登場します。
日本では農家や商家で愛され、農家では害虫駆除の益鳥、商家では繁盛のバロメーターとして保護されていました。
フンは良質の肥料になるとして、農家では重宝されていたそうです。
「雨が降る前はツバメが低く飛ぶ」ということわざがありますが、これは本当です。
ツバメが水分を含んで低くしか飛べない虫を狙うため、低いところばかりを飛んでいるように見えます。
梅雨の時期の田んぼでは、低く飛ぶツバメの姿をよく見かけます。
神奈川県、千葉県などでは減少傾向にあり、保護生物の指定を受けています。エサが豊富なアシ原の減少、営巣場所の減少などが原因ではないかと考えられています。
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