オシドリの生態と生息地。オスの特徴、夫婦仲や自由落下など
2016/12/09
仲の良い夫婦を「おしどり夫婦」と呼ぶこともあるほど、とても有名な水鳥です。
日本画などでも代表的なモチーフで、雄の美しさは池の中でも非常によく映えます。
オシドリの生態と特徴
生息地
日本国内で移動する漂鳥です。北海道や本州中部より北で繁殖し、冬は西日本など本州より南の地域に移動します。
冬は集団生活をし、古墳のお堀や池など、自然の餌が多く採取できる場所で100羽ほどの群れになります。
東アジアにしか生息しない珍しいカモ類で、ロシア南東部や朝鮮半島、台湾、中国などに生息します。まれに、海外のオシドリが冬に日本に渡ってくることも。
人間が移入したイギリスでも定着しています。
特徴
カモ科オシドリ属の鳥類です。日本では数があまり多くなく、レッドリストの軽度懸念(LC)に分類されています。
地域によっては絶滅が懸念されています。特に三重県は絶滅危惧1A種に指定され、厳重に保護されています。
準絶滅危惧種に指定する県が多く、保護が急がれる水鳥です。
体の特徴
オス
オシドリは雄(生殖羽)が非常に特徴的な姿をしています。鳥というより置物のような姿で、腰に2枚イチョウのような飾り羽が伸びています。
白、緑、オレンジ、紫、黒など、上品な色合いの極彩色で、非常によく目立ちます。日本の水鳥の中では最もカラフルだと言われています。
メス
雌は全身が淡い灰色で、目の後ろに白い線が入り、お腹は灰と白のまだら模様。雄に比べると地味な羽ですが、派手さがないぶん目の愛らしさやカモらしい曲線美が目立ちます。
繁殖期のオス
雄のエクリスプ(非繁殖期の羽)にはイチョウ羽はなく、顔は雌そっくりです。翼が緑でくちばしが赤いので、雌とはすぐ区別がつきます。
体の大きさ
くちばしの先からしっぽの先まで雄は48cm、雌は41cmくらい。比較的小柄なカモ類です。
翼を広げると68~74cm、体重500~600グラムほど。
SPONSORED LINK
繁殖について
営巣
オシドリは非常に変わった場所に営巣します。10メートル以上もある大木の樹洞に巣を作り、卵を暖めます。
外敵に襲われる危険が低い高い場所で巣作りをするのは、雌だけでひなを守る必要があるからと考えられます。
オシドリはカルガモなどと同じで雄は子育てに参加せず、雌だけで営巣から子育てまで行います。
適度な営巣場所が見つからないときは、地面で営巣することも。
産卵・孵化
4~7月ごろに9~12個くらいの卵を産み、30日くらいで雛が孵化します。
自由落下とは
雛にとっては、生まれて間もなく大変な試練が訪れます。地上10メートル以上の巣から地面に飛び降りないといけません。
まず雌が降りて、雛たちがそれに続きます。親は空を飛べますが、雛はまだ羽が発達していないので、自由落下です。
雛は体重がとても軽いので、飛べなくてもダメージはほとんどないと言われています。動物番組ではゴムボールのように地面で跳ねる雛の姿が紹介されて、話題になりました。
しばらくの間は雌と雛たちで暮らし、雛は40~45日くらいで空を飛べるようになります。秋には南に渡り、関東~西日本など飛来地に到着します。
オシドリ夫婦、実は・・・
「おしどり夫婦」という言葉は古くからあり、仲むつまじい夫婦を指す言葉でした。
実際のオシドリは毎年カップルを解消し、雄は育児に参加しません。しかし、繁殖期のオシドリを観察すると、昔の人がこの言葉を付けたことに納得できます。
雄は常に雌に寄り添い、一時も離れようとしません。
これは、雄より雌のほうが少なく、努力しないとカップルが維持できないためです。雄はイチョウ羽を雌に見せたり、近づいたりしてアピールしますが、より優れた雄を求める雌はなかなか振り向いてくれません。
振られても無視されても必死にアピールして、ようやく雌から受け入れられます。
オシドリの非常に美しい羽は、雌にアピールするために極限まで進化したものと考えられます。目立つ羽は外敵にも見つかりやすく、生存に不利です。
派手な格好でも生きていける生命力の強い雄だというアピールになります。
カップルが成立しても、雄は油断できません。雄のほうが雌の1.5倍も数が多いため、ほかの雄がカップルの雌に近寄ることは日常的。
さらに、猛禽類などの天敵からも雌を守らないといけません。このような雄の不断の努力が、「おしどり夫婦」という言葉を生みました。
食性およびエサ
植物性を中心にした雑食性です。秋にはドングリの実を食べる姿がよく見られます。
草や根、実などを中心に、昆虫類などを食べます。
シイ、カシなどドングリを実らせる木が多い明治神宮は、代表的なオシドリの飛来地。
しかし、ドングリだけを食べているわけではなく、その時期に採取できるものをバランスよく食べています。
人が与えるパンの耳などを食べる個体もいます。
天敵
猛禽類が最大の天敵です。
近年、都会や地方都市にもオオタカなど猛禽類の繁殖が確認され、都会暮らしに馴染んだ猛禽類は増えています。
餌付けに注意
オシドリにパン耳やどんぐりを与えて餌付けするケースが増えています。
パンは酸化した油分があるので、あまりオシドリにとって良いエサとは言えません。
ドングリはタンニンという毒があります。適量なら血流改善など効能があるタンニンですが、過剰摂取すると消化不良を起こします。
オシドリがドングリを食べる姿は可愛いですが、年中与えると中毒を起こす可能性があります。
何より、餌付けを行うと鳥が集まってしまい、鳥インフルエンザの蔓延リスクを上げてしまいます。
鳥インフルエンザは養鶏業者にとっては災厄と呼ぶべき病気で、感染した鶏はすべて殺処分するしかありません。
鳥インフルエンザは渡り鳥が運ぶと言われています。鳥から鳥に感染するうちに、やがて高病原性トリインフルエンザに変化します。そのため、野鳥が密集する餌付けは非常に危険だと言われています。
感染防止のために、水鳥への餌付けを止めた地域もあるほどです。
餌付けをすれば人にとっては可愛い鳥が身近で観察できて、鳥にとっては冬場にエサを簡単に得られます。一見すればWin-Winに見えますが、鳥インフルエンザ蔓延という大きな問題が発生します。
できるだけ、オシドリは観察するに留めて餌付けは止めましょう。
SPONSORED LINK
合わせて読みたい記事