鷹狩で活躍、オオタカの生態と特徴。鳴き声や餌、生息地など
古くから鷹狩の鷹として知られ、日本ではタカの代表として有名な猛禽類です。
しかし、かつては森林開発などで生息数が激減したこともあります。現在は熱心な保護活動により徐々に回復していると言われますが、まだまだ注視しなければいけません。
森の象徴と言われ、人を魅了して止まないオオタカは、どのような鳥でしょうか。
オオタカの生態と特徴
生息地
南方や西南諸島を除いた日本各地に生息します。
森林、里山をなわばりにし、基本的に一年じゅう同じ場所で暮らしています。
一部のオオタカは越冬のために南に渡ります。上昇気流に乗り、巨大な鷹柱を形成するサシバの渡りは有名ですが、オオタカもその中に混じって渡りをすることもあります。
世界的にはユーラシア大陸、北アフリカ、北アメリカ大陸の温帯地域に広く分布しています。
複数の亜種が存在し、日本の亜種には白い眉と黒い過眼線があります。
平地から山岳地帯まで広く分布し、昼の里山の食物連鎖の頂点に君臨する猛禽類です。
しかし性格は非常に臆病で繊細で、少しでも環境が変わると巣のある拠点を放棄してしまいます。そのため森林開発には大変弱く、近所にビルが建っただけでも繁殖をあきらめてしまいます。
オオタカの巣があることで開発中止を求める声が挙がることも度々で、開発業者泣かせの鳥でもあります。
特徴
タカ科ハイタカ属の猛禽です。日本にいるワシタカ類の中でも大きさは中くらいで、鷹狩りに利用しやすい程良いサイズと見なされたようです。
オオタカは猛禽類のため、雄より雌のほうが体格が大きい鳥です。「オオタカ」という名は、本来は雌のオオタカに付けられた名前でした。
くちばしの先からしっぽの先まで、雄は50cmほど、雌は60cmほど。翼を広げると100~130cmほどあります。
カラスとほぼ同格くらいの大きさなので、見分けるのは簡単です。
名前の由来
オオタカという名前は、大きな鷹という意味ではありません。もとは「あをたか」といい、「蒼いタカ」という意味でした。
蒼は、灰色が入ったくすんだ青色のことで、オオタカの背中は一面蒼色です。
鳴き声
鳴き声は「キョ、キョ、キョ、キョ、」と長く鳴き続けたり、「ピューイ」と鋭く鳴きます。
性格
オオタカは森林を住処にし、森林から出ることは滅多にありません。勇猛な姿ですが環境変化に非常に弱く、繊細な面があります。
オオタカが暮らす森は生態系が豊かな証拠で、オオタカが見捨てた森は何らかの理由で生態系が乱れていると考えられます。
なわばりの広さは100~200ヘクタールもあり、広大な森を支配します。
繁殖活動
つがい~営巣
オオタカは年に一度子育てを行います。
1月後半くらいから求愛活動をはじめ、3月ごろまでに巣を作ります。
オオタカの求愛はプレゼント作戦です。雄は適当な獲物を捕まえ、雌に渡します。しかしその様子は渡すというより「奪う」といったほうが適切で、オオタカのつがいはたいてい恐妻家です。
オオタカは同じ猛禽類のサシバやハイタカまで補食します。雄のオオタカにとって、雌のオオタカは非常に恐ろしい存在のようです。
かつてはアカマツの巨木の上で巣を作っていましたが、マツクイムシの被害でアカマツが絶滅寸前の状態になり、現在は様々な木に営巣するようになりました。
産卵~子育て
4~5月に3~4個の卵を産み、主に雌が卵を暖めます。ときどき雄と交代しますが、ほとんど交代せずに雛を孵すことも。
40日ほどで雛は生まれます。白くふわふわした産毛に、つぶらな真っ黒い瞳がたいへん愛らしく、勇猛な親の面影はありません。雛は食欲旺盛で、雛の間でも生存競争があります。
日本の生態系ではすべての雛が巣立つことは難しく、1~2羽ほどは雛のうちに死亡することも珍しくありません。
巣立ち
6~7月ごろに巣立ちを迎え、しばらくは親から餌を貰います。9月ごろに雛は独り立ちし、自分のなわばりを築くために新天地を目指します。
雄よりも雌のほうが親元に長くいる傾向があります。
大人と幼鳥の違い
親のオオタカは青みがかった灰色の背中で、お腹は細かい横斑が並んでいます。足は鮮やかな黄色で、眼の色は黄色。
巣立って1年の雛(若)は全身が茶色で、お腹の斑点は縦に走っています。翌年の春ごろに羽が生え変わると、ようやく大人と同じ柄になります。
カラスなどは、オオタカの若鳥には攻撃を加えますが、大人のオオタカにはあまり手を出しません。成熟したオオタカの恐ろしさを、身に沁みて知っているからでしょう。
食性および餌
里山の頂点に君臨するだけあり、比較的大きな獲物を狙います。特に、雌のオオタカは大きな獲物を狙う傾向があります。
キジバトやカモ、サギなど中型の鳥、ネズミやウサギなどのほ乳類などを捕まえます。
優れた身体能力で、執拗に何度も何度も攻撃する習性があります。速度も速く、急降下すると時速130kmに達することも。
同じ猛禽類のハイタカやサシバ、自分の体とほぼ同格のカラスを狩ることもあります。
大きな獲物は止めを刺すことができないため、生きたまま補食します。鳴き暴れる獲物を押さえながら食べる姿は残酷に見え、自然の厳しさを実感させられます。
基本的には森林の中で狩りを行いますが、最近は人里や都市にまで進出する個体もいます。
オオタカの保護活動により、オオタカが人間を天敵と思わなくなったことも一因ではないかと言われています。
運動グラウンドのネットに鳥を追い込み、捕獲することも確認されています。臨機応変に何でも利用する賢さもあります。
東京の公園などで、カラスを狩ったオオタカが生きたままカラスを食べる姿が動画投稿されています。
天敵
雛の天敵はカラスです。普段はオオタカに狙われるカラスも、雛や卵は補食します。
成鳥になると、唯一の天敵は人間になります。人間はオオタカが暮らす森に進出し、環境を大きく変えてしまいます。
その結果、貴重ななわばりを放棄せざるを得ないオオタカは後を絶ちません。オオタカの保護は森林保護に直結するため、開発との兼ね合いを考えながら進めないと国土の荒廃に繋がります。
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オオタカの飼育はできるか
オオタカは現在でも鷹狩に使われる鳥です。そのため、現在も鷹匠が飼育しています。
しかし、日本に生息するオオタカを鷹狩のために捕獲することは厳しく禁じられています。日本で使われる鷹狩のオオタカはすべて、海外から輸入された鳥だけです。
(しかし現在もオオタカの密猟が事件になり、ニュースになることがあります)
オオタカは外見が美しく、獲物への執着が激しいため、鷹狩には最適な鳥です。しかし非常に繊細で変化を好まず、人間はもちろん人間の暮らす環境のすべてがストレスになります。
オオタカを飼うということは、彼らにとっては全く異質な人間社会に慣らさないといけないということです。
それがオオタカにとってどれだけ過酷かを考えましょう。
育てることができず、手放す人が後を絶ちません。全く初心者向きの鳥ではないので、ある程度猛禽類に慣れてから、熱心に学びながら狩りを教える必要があります。
飼い方
オオタカは後ろに糞を飛ばすので、人間と同じ場所では暮らせないと言われています。
一般的には、離れに大きなゲージを用意し、訓練の時以外は不用意に接しないようにします。
慣れない間は水浴び用の水すら、深夜の暗い時期に行わないといけません。
生半可な気持ちでは絶対に飼えない鳥なので、オオタカを飼育している方と親しくなり、よく学んでから検討しましょう。
注意点
オオタカの観察には細心の注意が必要です。
たとえ数キロ先でもオオタカには人間の姿を捉えることができます。人間がオオタカの巣を覗きすぎて、巣を放棄したという事件も後を絶ちません。
特に、営巣中のオオタカの観察は細心の注意を払い、必要最低限に止めましょう。
バードウォッチャーが鳥に近づきすぎて鳥が逃げてしまう被害は後を絶ちませんが、特にオオタカは繊細な動物です。観察するときも、警戒されない距離を保ちましょう。
エピソード
鷹狩
日本で行われる鷹狩は奈良時代から続く伝統で、戦国時代以降には特に流行しました。
大名は各自で鷹匠を雇い、美しいオオタカを自慢していました。オオタカは一種のステイタスで、現在のスポーツカーや高級腕時計などに相当するものでした。
絵のモチーフにもオオタカは一般的なものでした。何人も有名な絵師がオオタカの絵を残しています。
鷹匠は身分は低かったものの、役割がら大名と親しくなる機会が多い特殊な立場でした。中には武将に出世し、政治的な闘争の一端を担う者もいました。
オオタカという魅力的な鳥が、人の垣根を越えて絆を深めた経緯があります。
かつての鷹匠は鷹を訓練するだけでなく、御鷹場(大名管轄の狩場)の環境を整え、獲物を増やす環境保全員としての役目もありました。
植樹や水を引いた記録が残っています。
現在の鷹匠は狩りをするだけでなく、害鳥を追い出すために出動することも増えました。
たいていはハリスホークなど扱いやすい猛禽類を使いますが、オオタカを放すこともあります。
オオタカとの関わり
オオタカは森の象徴、健全な自然の印として熱心な保護対象になっています。保護活動が実り、一時は400羽まで減少したオオタカも、関東だけで5000羽ほど回復しました。
一方で、開発も人間の生活には欠かせません。
環境省はオオタカの数が回復したことを理由に、絶滅危惧Ⅱ種から準絶滅危惧にランクを上げました。これは法律では、オオタカがいることを理由に開発を禁じないという意味です。
似たような状況のハヤブサは絶滅危惧のままなので、政治的な意図があったことが推測できます。これを厳しく批判する方もいますが、一方で保護活動に傾倒しすぎて人間のインフラ形成を著しく阻害することは、地方の衰退にも繋がります。
人と自然の共存は非常に難しい課題ですが、オオタカは今も昔もその象徴です。
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