オナガの生態と特徴。分布や生息地、鳴き声など
2016/10/19
オナガは瑠璃色の背中が美しい、ムクドリくらいの大きさの鳥です。
関東や東北では比較的よく見かけ、鳥に詳しくない方でも何となく見覚えがあるでしょう。
しかし、ほかの地域ではほとんど見かけず、西日本では見たことすらない方も珍しくありません。
オナガの生態や特徴
生息地
分布
オナガの生息地は奇妙な分布で、学者たちを悩ませ続けています。
世界ではユーラシア大陸の東西の端に分布し、東は日本、ロシア東部、中国東部などに広がり、西はスペインなどイベリア半島に分布します。
何故このような極端な分布になったのか不明ですが、遺伝子解析でイベリア半島に暮らすオナガは日本のオナガと別種であることが判明しました。
それまでは江戸時代にオナガが輸入されたものが野生化したという説も流れていました。
西日本からいなくなった理由
オナガは集団を作る性質があるためか、生息地では比較的よく見かけるほど数が多い鳥です。しかし、生息範囲から外れると全く見かけません。
日本では1970年ごろまでは、本州全土と九州の一部に広く分布していました。しかし1980年になると、西日本や九州での繁殖が確認できなくなりました。わずか10年で、西日本からオナガの姿は消えたのです。
現在は中部地方と神奈川県より北の地域でのみ留鳥として生息しています。しかし数が減っているわけではなく、むしろ増加傾向にあります。
なぜオナガが東に集中したのか、理由は分かっていません。西日本のほうが東日本よりも森林保護に熱心でない傾向はありますが、オナガのような都市でも暮らす鳥には当てはまらないでしょう。
九州のオナガが去ったのはカササギとの生存競争に負けたという説もありますが、西日本すべてのオナガが消えるほど、カササギの数は多くありません。
まるで「国譲り」をしたように忽然と消えた謎は、現在も解明されていません。
体の特徴
カラス科オナガ属の留鳥です。その名のとおり、尾が長く太いのが特徴です。
平地~低い山の日差しが入る明るい森や林を好み、木が多い市街地でも多く見られます。
くちばしの先からしっぽの先まで34~39cmほど。数字だけを見ると大きく見えますが、オナガは尻尾が長い鳥なのでムクドリくらいの大きさの鳥です。
頭は濃い紺色で、遠目から見ると黒く見えます。
喉から後頭部は白、胸とお腹は淡い灰色、背中は濃い灰色と青色に分かれています。
尻尾の先が白いのは、東アジアのオナガの大きな特徴です。(イベリア半島のオナガは尻尾の先は白くありません)
カラフルな色合いですが、カラスの仲間なだけあり知能は鳥類の中でも優れています。
営巣や産卵、子育ての仕方
17~35羽ほどの群で暮らし、巣も集団で作ります。
5月ごろから営巣をはじめ、6~9個の卵を産みます。17~20日ほどで孵化し、18日ほどで巣立ちます。
体力がある番いはヒナが巣立ちして間もなく、2回目の繁殖に入ります。
かつてオナガはツミなど猛禽類の巣の近所に営巣することもありました。
ツミは天敵のカラスが近づくだけで攻撃を加えるので、オナガにとっても有り難い存在でした。しかし近年カラスの数が増えすぎて、ツミも近所にカラスが来た程度では緊急発進しなくなりました。
ツミは自分の子供も狙うため、オナガはツミを「役立たずの用心棒」と見なして離れていったと言われています。
子育ても群で行い、給仕は両親だけでなくヘルパーが加わります。
ヘルパーは前年生まれの若鳥など、育児経験が浅い鳥が参加する傾向があります。繁殖に失敗した鳥がヘルパーになることで、群全体の生存数を上げて繁栄します。
子育て上手な番いが2回も繁殖できるのは、群全体で子育てをサポートする体制が整っているからです。
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鳴き声
鳴き声はカラスらしく、集団で「ギューイギュイギュイ」「ゲー、ゲー」など騒々しく鳴きます。
黙れば美人と揶揄されることもありますが、これは警戒音なので耳障りなのは仕方ありません。
つがい同士でチューイ、ピューイ、チュルチュルチュルと甘く鳴き交わすこともあります。
食性および餌
雑食性で、昆虫、種子、果実などを主に食べます。
カラスの仲間らしく、余ったエサを貯蔵する習性があります。
繁殖期には他の鳥の巣を襲い、雛を食べることも。ツバメの巣は特によく狙われるため、軒下にツバメを呼び寄せたい場合は設置場所に気をつけないといけません。
冬のエサに乏しい時期にオナガに餌付けしたい場合は、バードケーキを置くと喜んでやって来ます。バードケーキは、小麦粉と砂糖、ラードを混ぜて団子にしたもの。生のまま団子にして、少量づつ与えます。
焼けばクッキーになり、人間も食べることができます。
バードケーキはエサと認識してくれるまで時間がかかるので、根気よく設置を続けましょう。フルーツを切ったものと一緒に置くと、比較的早く餌付けできる傾向があります。
天敵
カラス、ワシタカ類、フクロウなど大型肉食鳥が主な天敵です。
しかしオナガは集団で暮らし、敵には集団でモビングと呼ばれる威嚇攻撃を行います。天敵相手でも、昼間なら十分に反撃できるのがオナガの強みです。
注意点
繁殖期になると、オナガの巣立ち雛や、巣から落ちた雛を拾ったという報告が多くなります。
巣から落ちた雛の場合、放置しておくと死んでしまいます。この場合は保護したほうが賢明でしょう。
しかし巣立ち雛の場合は、近所に必ず親がいます。誘拐になるので絶対に持ち帰らず、野良猫などの手が届きにくい高い場所に置いて、その場を離れましょう。
もし危険な場所や、近くに止まり木になりそうなものがなければ、少し離れた場所に置いても構いません。オナガは大きな声で親を呼ぶので、必ず親は見つけます。
巣立ち直後は枝渡りが下手で、落下することは珍しくありません。そっと高い場所に置く程度のサポートに止め、見守りましょう。
明らかに怪我をしている場合はタオルで包み、保温しながら最寄りの野鳥保護センターに持ち込みましょう。
エピソード
オナガはスペインのイベリア半島と東アジアの2つの地域で繁殖しています。
イベリア半島には数万年前のオナガの化石が発掘され、この当時から東アジアのオナガと分岐していたと考えられます。
オナガVSカッコウ
オナガは、カッコウに託卵されてしまう鳥の代表です。
カッコウは様々な鳥に託卵しますが、25年ほど前からオナガにも目を付けたようです。一時はオナガの巣の80%が託卵されてしまうありさまでした。
しかしオナガは集団で暮らす鳥で、しかも賢いため、10年ほどで対策するようになります。カッコウが近づくと群全体で追い出し、怪しげな卵を見つけると捨ててしまいます。
オナガの寿命は長くても5年なので、個体だけではなく群全体が学習し、対策することを覚えました。そのため、カッコウも易々と託卵することができなくなり、卵をよりオナガに似せるなど偽造技術を上げて対抗しています。
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