ノゴマの生態と特徴、鳴き声(さえずり)について
ノゴマは本州では春と秋のごく一部の期間しか観察できない珍しい野鳥です。
ある短い期間だけ出現ポイントを長時間探索してようやく発見できるか否かというほど貴重な野鳥で、何気なく見つけたらとても幸運な出会いです。
名前の由来は「野原のコマドリ」という意味です。
ノゴマの生態
生息地
繁殖地はシベリアから中国東北部など。冬になると東南アジアに南下して越冬します。
日本で繁殖する地域は北海道に限られます。北海道では夏鳥で、特に道東の草原で多く見られます。南西諸島では少数のノゴマが越冬します。
しかし年に2回だけ日本全国で観察できる時期があります。春と秋の渡りのシーズンです。
ノゴマは日本を経由して東南アジアへ南下し、ロシアへ北上します。終着地ではなく一時的に滞在する鳥を「旅鳥」と呼びますが、ノゴマも旅鳥の一種です。
ノゴマという名前のとおり、平地や低い山の草原や低い木の森を好みます。北海道の道東では高山のハイマツ林でも繁殖します、
渡りの途中には森に立ち寄ることもあり、河川敷のヤブや池の周囲の森などで見かけることもあります。
関東では埼玉県所沢市の狭山湖(山口貯水池)や川島町、栃木県の奥日光にある戦場ヶ原、荒川の河川敷などが有名な観察スポットです。この時期になるとノゴマを求めてバードウォッチャーや撮影者が押し寄せます。
関東だけでなく大阪の淀川河川敷など多くの場所で見かけることがあります。渡りの時期になれば毎朝河川敷や野原を歩くだけでも遭遇できるかもしれません。
旅鳥のノゴマの遭遇率は低いですが秋の渡りの時期に遭遇したという話はよく聞きます。もし身近でノゴマを観察したいなら秋がお薦めです。
特徴
スズメ目ヒタキ科の小鳥です。ヒタキ科の中では小柄ですが雄の赤い喉がよく目立ちます。
くちばしの先からしっぽの先まで15.5cm、体重は16~29gくらい。スズメほどの大きさです。
体は褐色で眉とくちばしの根元あたりが白く、雄は目元の黒と喉の赤みがよく目立ちます。繁殖期になるとこの美しい喉を振るわせて高い場所で精一杯さえずります。
雌は喉が白い個体が多く、まれに赤い個体もいます。目元も黒くないのでとても地味な姿です。
よく見ると胸からお腹にかけては汚れたような白い色になっています。
くちばしは体のわりには長く、虫を捕まえやすい構造です。足の指は比較的長く、枝や葦などを掴みやすい作りです。
繁殖活動
北海道では5月ごろから繁殖期に入ります。
シベリアなどから渡ってきたノゴマの雄はシシウドなど背の高い草や木のてっぺんに陣取り、美しいさえずりで雌を誘います。高い場所でさえずることに拘るので「ソングポスト」と呼ばれることもあり、夜もさえずります。
さえずりの声は非常に複雑で「キョロキリキョロキリキリキョロチリリリリ」と聞こえます。
倒れた木の下など目立たない場所に皿状の巣を作り、6月から8月ごろまでに3~5個の卵を生みます。雌だけが抱卵して14日ほどで孵化します。雛がある程度まで育ったら夫婦で餌やりに励みます。
9月ごろまでに巣立ちを終え、10月ごろから渡りで南下していきます。本州でもっともよく見られる時期はこの頃です。
エサ
虫など動物性のエサを好みますが機会があれば果実も食べます。
主に地上でエサを探し、歩きながら昆虫や蜘蛛などを捕まえます。
天敵
草原に暮らすので天敵は多く、猛禽類、イタチ、野犬やノネコなどが主な天敵です。雛は蛇に補食されることもあります。
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エピソード
ノゴマの雄は喉の赤色が非常に美しく、国旗のように見えるので「日の丸」と呼ばれることもあります。
学名のcalliopeの語源は古代ギリシャに九柱いたとされる文芸神の一柱カリオペです。カリオペは「美声」という意味なので、小鳥の中でも特に美声という意味で名付けられたと考えられます。
バードウォッチングの注意点
秋になるとノゴマが全国各地で見られるようになりますが数は少なく、すぐに見かけなくなります。
しかも雄の姿はとても特徴的で美しいと評判です。そのためか飛来地には連日多くのバードウォッチャーや写真家が押し寄せます。
あまりにも人が多すぎて草木を踏み荒らしたりノゴマや他の生き物を怯えさせてしまうトラブルがあちこちで聞かれます。
ノゴマに限らず野鳥観察や撮影は地域の自然にできるだけ干渉しないように最大限配慮しましょう。
人工物だから自然に悪影響は与えないだろうと道路に居座ってサイクリストや地元の歩行者の妨げになるという話も聞きます。自転車でも轢かれたら怪我をするおそれがあり、自分のカメラよりも高額なスポーツ自転車を弁償させられるかもしれません。
あまりにひどいと地元民に追い出されたり通報されかねません。ノゴマを追いかけるのに夢中にならず、お互いの領域を守って最低限のモラルは忘れないように心がけましょう。
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