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絶滅撤回、再発見!クニマスの生態。当時のニュース振り返り

2016/10/04

リュウグウノツカイやメガマウスザメなどの深海魚から金色のハモやナマズといった体色変異個体の捕獲まで、1年に数回魚関係のニュースがあります。

しかし、ここ数年の間に日本中が沸き立った魚のニュースといえば、なんといってもクニマスの再発見に他なりません。

この魚は、日本の絶滅魚類の中で唯一「絶滅」が撤回された魚でもあります。

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生態

生息地

クニマスは秋田県田沢湖にのみ生息する固有種で、ヒメマスの亜種とされていました。
ただし、ヒメマスと交雑していないことなどを理由に別種とする意見が近年では優勢です。

田沢湖は日本でもっとも深い湖であり、平均水深は280メートル、最深部は400メートルを超えるとされています。このような特異な環境が、クニマスの進化を促したのではないかといわれています。

絶滅したとされた理由

クニマスは戦時中に食糧増産などの目的のため付近の川から強酸性の水が引き込まれたために絶滅したとされ、数多くの図鑑に日本の絶滅魚類の代表として取り上げられてきました。

世界中を探しても20個体ほどしか標本がなく、まさに「幻の絶滅種」でした。

特徴

クニマスは現地でキノシリマスと呼ばれ、体色は灰色がかり黒っぽいこと、水深100から300メートルと深場に生息し、泳ぎが活発でないこと、などが知られています。

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絶滅撤回、再発見のニュース

味がよかったためか、後に再発見の舞台となる山梨県の富士五湖にひとつ、西湖など各地に発眼卵を送ったという記録がありました。

秋田県の観光協会は賞金を設定してクニマスの情報を待ちましたが、生存しているという情報は長年ありませんでした。

日本で1箇所だけ生息し、深場で過ごす謎に包まれた絶滅種であるクニマスは、「釣りキチ三平 平成版」などの作品にも登場しています。

2010年、クニマス再発見のニュースが日本を駆け巡りました。西湖から送られたヒメマスの中に、クニマスと同定された個体がいた、というニュースです。

京都大学の研究グループとイラストレーターでありタレント、東京海洋大学の客員教授のさかなクンらが、発表したこの結果に、日本中の魚好きが騒然となりました。

当初は純粋なクニマスか怪しいのではないか、ヒメマスと交雑しているのではないかと疑う声もささやかれました。しかし、形態学的なデータがヒメマスと異なること、遺伝子解析の結果ヒメマスとクニマスは交雑していないことが明らかになり、クニマスは絶滅を免れ、ひっそりと山間湖の深部で生き延びていたことが確定しました。

ちなみに、現地の人々や釣り人の間では、「なんだか黒っぽいヒメマスが採れた、釣れた」としばしば噂になっていました。しかしまさかクニマスであると思う人も折らず、「ヒメマスの変種」程度にしか認識されていなかったようです。

ちなみに、クニマスの産卵期は春とされます。しかし産卵前に黒くなったものは非常に不味く、釣り上げたり漁獲したりしてもリリースする人が多かったようです。

絶滅を免れた理由とは

クニマスが西湖で絶滅を免れた理由は、その特異な生態にあります。

西湖には魚食性のブラックバスも生息しています。しかし、クニマスが生息する100から300メートル層にブラックバスは生息しないため、卵や幼魚の食害を免れることができました。また、この生態はヒメマスとクニマスの間で生殖的な隔離をもたらすバリアでもあります。

このようにクニマスは、再発見されたため絶滅が撤回されました。

しかし、本来の生息地である田沢湖ではすでに絶滅してしまっているため、野生絶滅として扱われています。

西湖では結構な数のクニマスが生息しているとされますが、貴重な魚のため個人飼育は言語道断です。また、通常深場を好む魚であり、他のサケの仲間と同じく冷水性なので、個人規模での飼育難易度は相当高いと思われます。

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