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キジバトの生態と特徴。雛の飼育、巣や鳴き声、ドバトとの違い

2017/02/09

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ときどき、単独行動や二羽だけで行動している、小さな細い鳩を見かけることがあります。

ドバトのように群れを作らず、野鳥に近い生態を持つこの鳩はキジバトです。

夕方や雨上がりの薄暗い時期に、電柱で鳴いている姿をよく見かけます。鳴き声だけ聞いたこともある方は多いのではないでしょうか。

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キジバトの生態と特徴

生息地

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ユーラシア大陸の東部と、日本各地に生息しています。
北海道では夏鳥、ほかの地域では留鳥(または漂鳥)です。

日本ではあちこちで見かけるありふれた鳥ですが、世界的には限られた地域にしか生息していない貴重な鳥です。
学名の「Streptoperia orientlis」は、「東洋のキジバト」という意味です。

本来の生息地は明るい森でした。「ヤマバト」とも呼ばれ、現在も狩猟動物として、猟期になると狩りの対象になります。

しかし60年代になると、都市での狩猟は全面禁止されました。人間に怯えていたキジバトも徐々に恐れなくなり、70年代ごろから都市で暮らすキジバトが増えました。

現在ではスズメやカラス、ヒヨドリなどの次によく見かける鳥になりました。(地域によっては数が減った場所もあります)

しかし、ドバトに比べると野生らしさが残り、ドバトほどには人に懐きません。人の姿を見かけるだけで逃げてしまう臆病な個体もいます。

特徴

種類

ハト科キジバト属の鳥類です。
北海道から九州まで生息するキジバトと、奄美群島、沖縄などに生息する亜種リュウキュウキジバトがいます。リュウキュウキジバトのほうが若干濃い色ですが、どちらも生態はほぼ同じです。

体の特徴

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くちばしの先からしっぽの先まで33cmほど。
名前の由来は、キジの雌の羽色によく似ているところから名付けられました。

ドバトに比べて一回り小さく、スリムに見えます。羽の色は紫が入った灰色で、「葡萄色」とも呼ばれます。

翼と背中の羽根は黒に白や赤褐色の縁があり、ウロコのように見えます。

喉の横には斜め横筋が走る、地味ながらも趣のある色合いをしています。

この羽の色は、明るい森の中に入ると保護色になり、敵に見つかりにくい効果があります。特に、背中のウロコ状の色合いは木陰に隠れやすく、抱卵中に襲われる危険を最大限防ぎます。

瞳はオレンジ色で、人形の目のようにハッキリした色合いです。

雌と雄について

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雌雄とも同じ羽で、一見すると雌雄の区別はできません。
基本的に、いちど夫婦になると長い間ともに生活しますが、繁殖に失敗すると1シーズンで離婚して、新たなパートナーを探すことが多いようです。

ドバトとの違い

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※ドバト↑見た目が違いますね。

ドバトとの違いは、体の大きさだけでなく生態にもあります。

ドバトは地中海原産のカワラバトが家畜化した鳥で、カワラバトは崖などに集団で暮らす習性があります。

ドバトもその習慣は変わらないため、たいていは集団を作り、複数の仲間とともに餌を探します。

キジバトは単独または番いで行動します。
キジバトは20世紀に比べて人には慣れつつありますが、野鳥らしく警戒は怠りません。個体差が激しいですが、ドバトと野鳥の中間くらいの警戒度です。

しかし仕草はドバトに近く、口を付けたままゴクゴク水を飲み、日光浴を好みます。

地面や屋根に伏せて、羽を片側だけ広げて日光浴を楽しみます。水浴びなどと同様に、寄生虫を追い出すために行っていると言われています。

バードテーブルなどにやって来るキジバトは「人間がエサを用意している」ことを知っているらしく、人慣れしています。エサがないと催促したり、人家の窓から中を覗いたり、まれに家に上がり込んでエサを盗み食いしたりします。

鳴き声

キジバトのさえずりは「デーデー、ポッポー、」とも「ホーホー、ホッホー」とも聞こえます。最後は「デー」で終えることが多いのも特徴です。

フクロウの鳴き声と間違う方が多いですが、実はキジバトの鳴き声です。雄がさえずり、口を開けずに喉元を膨らませてさえずる姿を見かけることがあります。

さえずりは個体差があり、中には平坦な音調でさえずるキジバトも。明け方や雨上がりなど、薄暗い環境で鳴くことが多いようです。

子育て

繁殖期

ハトの仲間は「ピジョンミルク」と呼ばれる栄養素を雛に与えて育てます。文字通りミルクのように真っ白な液体で、「そのう」という器官で作られ吐き出して与えます。
そのため、親が餌を食べられる限りは子育てが可能で、周年いつでも繁殖期です。

ピジョンミルクは雄も出すことができるので、雌雄そろって子育てに参加します。
都市で問題になっているドバトの異常繁殖も、一年に何度も子育てできるため。キジバトが野鳥の中では比較的数が多いのも、同じ理由です。
しかし、冬に繁殖することは少なく、一般的な野鳥と同じく、春から秋にかけての繁殖が多い傾向はあります。

営巣

キジバトは木の枝にまばらに細い枝を組み、簡単な皿巣を作ります。あまりに簡素で、下から卵が透けて見えることも。
ベランダのくぼみや、他の鳥の古巣を利用することもあります。

抱卵~巣立ち

卵は親に比べて非常に小さく、適当に作った巣でも十分に温めることができます。
1度に2個の卵を産み、昼は雄、夜は雌が抱卵します。15日ほどで孵化し、さらに15日ほどで巣立ちます。
大きくなった雛は、二羽同時に親の口に頭を突っ込み、ピジョンミルクを貰うことも。栄養価の高いミルクを貰うことで、素早く大きくなります。

食性および餌

雑食性で、果実や種子など植物性のエサや、昆虫、ミミズなどの動物性のエサを食べます。
カルシウム補給のために、貝類を食べることも。

公園など、土のある地面に下りて、エサをついばむキジバトの姿をよく見かけます。
稲刈り後の田んぼに残った稲穂をついばむことも。

豆やお米も好物で、バードテーブルにこれらのものを置くと、キジバトが食べにきます。

豆農家にとっては害鳥で、せっかく蒔いた種を食い荒らすこともあります。

天敵

イヌワシ、チュウヒやハヤブサなど、猛禽類が主な天敵です。カラスも大変怖がります。
狩猟期になると、人間(ハンター)も天敵になります。
現在は狩猟期間とポイントが厳密に定められ、人里から少し離れた地域のキジバトを狩っています。

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キジバトの狩猟

猟期、狩猟方法

その年により若干異なりますが、一般的には鳥類の狩猟は11月ごろに解禁します。
キジバトは「待ち漁」が効率よいと言われています。キジバトはお気に入りの木があり、地面に下りるときもまずはその木に止まって安全確認してから下ります。
そのため、普段からキジバトが好む木を見つけ、猟期にその付近で待つと効率よく狩りができます。
中には、デコイ(木の置物)を木の枝にくくり付け、キジバトを油断させる能動的な待ち漁もあります。

狩猟期のキジバトは非常に警戒心が強く、50メートル先でも人影を見るや逃げてしまいます。
あまり遠すぎると、キジバトと他の鳥の区別が付きにくく、ハンター泣かせの鳥でもあります。
同じハト科のドバト、羽の色が似ているチョウゲンボウなどは特に見分けがつきにくい鳥です。

キジバトを食す

キジバトは解体が比較的楽で、羽もすぐに抜けます。手の熱で脂が溶けてしまうので、素早く行いましょう。
しとめたらすぐに血抜きを行いますが、あまり行わない方もいます。

解体したら、薫製やソテーにすると大変美味しく頂けます。フランス料理にチャレンジするのも良いでしょう。
刺身で食べる、などという声もありますが、野生生物は雑菌や寄生虫の宝庫です。肝炎や食中毒のリスクがあるので、絶対に生で食べてはいけません。
ようやく抗肝炎ウイルス薬が開発されたとはいえ、肝炎を治すのは身体的にも、金銭的にも大変な負担になります。

巣の撤去で注意したいこと

キジバトがベランダに営巣すると、フン害や鳴き声でうるさいことがあります。虫が沸くこともあるので、巣立ちまで耐えられないなら巣の駆除を依頼しましょう。
キジバトは野鳥なので、勝手に巣を取り除くのは鳥獣保護法違反になります。必ず市町村に問い合わせましょう。

飼育について

キジバトは野鳥のため、家で飼育することはできません。怪我をしたり、巣から落ちた雛を保護する場合は、必ず県の動物保護課に問い合わせましょう。

キジバトのヒナには、ピジョンミルクのかわりに豆乳を与えると良いとされています。
成長すれば米、豆、トウモロコシ、雑穀などに切り替えます。ミルワームなど昆虫類も食べます。ハト用のエサを与えると安心です。

「そのう」に小石を貯めて消化を促すため、貝殻や小石も少し与えましょう。

雛を拾っても、怪我がなければ木の上に上げておくだけで様子見しましょう。やがて親がやって来ます。

エピソード

キジバトは幸運のシンボルとされ、古くから人々に愛されている鳥です。
夫婦仲が非常に良く、子育て熱心な生態も愛される要因でしょう。
近年ハンターが減っている上に、庭などで鳥にエサを与える方も増えたため、キジバトと人の距離は大きく縮まっています。

しかし、良くも悪くも図々しさを発揮するため、中には害鳥として嫌がる方もいます。
キジバト対策で、ベランダに網を張ることもあります。キジバト独特のさえずりが、うるさいと感じることもありますが、野鳥なのでみだりに追い立てると通報されかねません。
キジバト避けに、窓ガラスに鷹のシルエットを貼って警戒を促すという方法もあります。

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