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カワウの生態と特徴について

大きめの池や河川、湖などでよく潜水している巨大な黒い鳥がいれば、それがカワウです。
日本のカワウはウミウより少し小さめで現在は鵜飼いには使いません。養殖魚を荒し回りフンは木を枯らすので害鳥と見なされ駆除の対象にもなっています。
しかしかつては水質汚染などが原因で日本の生息数が3000羽まで減ったこともあります。やっかいな隣人と言われることもあるカワウはどんな鳥でしょうか。

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カワウの生態

分布

日本では本州に多く分布します。特に東京を中心にした関東、東海、近畿は数が多く一年中観察することができます。
留鳥または漂鳥で、夏は東北から北海道へ、冬は九州より南に移動する個体もいます。長距離は飛ばない鳥で国をまたいだ渡りはしませんが、冬は大東諸島や沖縄の宮古島まで移動することもあります。
東京上野の不忍池は有名な繁殖地で、琵琶湖の竹生島や大分県大黒島、愛知県鵜の山、三重県の南伊勢町五カ所浦なども有名な繁殖地です。カワウは集団でコロニーを形成して繁殖する性質があり、いちど巣と決めたところに固執します。

以前は河川や湖沼が主な生息地でした。近年は数が増えた影響や上流部へのコイ放流などの影響で川の上流部や海などで見られることも増えました。
沿岸部に多く暮らすウミウに比べ内陸まで分布するカワウは人間の生活圏と重複しやすく、ウミウに比べて摩擦を起こしやすい傾向があります。

世界各地の局地に生息し、アメリカ東海岸、ヨーロッパ全土、アフリカ各地、インド各地、オーストラリアの東沿岸部、ニュージーランド各地、中国の河川部などに分布します。
中国亜種のシナカワウは鵜飼いの鵜に利用され、ヒナの育成専門の鵜匠が大量にエサを与えて太らせ、鵜を使役する鵜匠に売却します。鵜匠と鵜はとても仲良く、鵜はヒモをつけずに放され自由に魚を取っては鵜匠のもとへ帰ってきます。

生態

カツオドリ目ウ科の鳥類です。以前はペリカン目に分類されていました。
日本でも上位に入る大型の野鳥でガチョウくらいのサイズです。くちばしの先からしっぽの先まで82cmほど、体重1.8~2.8キロ、翼を広げると135cmもあります。画像などではあまり伝わりませんがカワウは巨大で迫力がある鳥です。
全身はカラスのように黒く、目の下から頬にかけては白く、くちばしの根本は淡く丸いオレンジ色です。くちばしは長く先がかぎ爪のように尖っています。
翼は少し淡い黒褐色で、近くで見ると羽の一枚一枚が浮かび上がり美しく見えます。ウミウと見分けが難しい鳥ですが翼の褐色である程度判別ができます。
繁殖期には頭が白くなり、腰の両側に白い斑点が出ます。
目はエメラルドグリーン色で美しく、水中を潜るときは瞬膜という半透明なまぶたを閉じて狩りをします。このまぶたのおかげで水中でも視界が良好で狩りがしやすくなっています。

カワウは潜水して魚を追いかけます。潜水しやすいように足は胴体の後ろのほうに付き、大きな足ひれがあります。
ウの仲間は体を覆う油脂分が少なく、水面に顔を出しても胴体の大半は水の中に沈んでいます。潜水しやすい反面体の中にまで水が入り込みやすく、すぐに体が冷えてしまいます。
ウが岸辺で羽を広げる姿をよく見かけます。これは水に濡れた体を早く乾かすための知恵で、ウがいる地域ではよく見られる光景です。潜水能力に優れ70秒ほど水中で移動し10メートルも潜ることができます。
性格は臆病で、脅かされるとすぐに逃げてしまいます。しかし場所やエサに執着するのですぐに戻ってしまいます。

カワウは集団で木の上に大きな巣を作ります。周囲の生木の枝を折って40~60cmほどの皿巣を組み上げます。
カワウは繁殖期が不安定で冬でも繁殖できますが、多くのカワウは春から夏にかけて繁殖します。
産卵期11~翌6月、卵を3~4個生み25~28日で孵化します。巣立ちには少し時間がかかり、30~45日ほどかかります。カワウの幼鳥は色が淡くおなかが白いのが特徴です。
カワウの鳴き声は「クルルルルル」「グワグワ」「ゲレレレレレ」など。普段はほとんど鳴きませんが繁殖期のコロニーでは盛んに鳴き交わす姿が観察できます。ヒナが巣立つまでカワウのコロニーは大変賑やかです。

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エサ

魚類がほとんどを占めます。魚の好き嫌いはなく、その地域にいる魚ならなんでも補食します。
釣り堀や養殖場を荒らすこともよくあり、サギとともに対処が必要な鳥です。
浜松湖ではウナギを、愛知や岐阜、三重ではアユを食べてしまう害鳥と見なされ駆除の対象になっています。

天敵

大きな鳥なので成鳥になるとほとんど天敵はいませんが、オオタカなどに狙われることはあります。
ヒナの間はカラスが主な天敵です。カラスはカワウの巣を襲撃して卵やヒナを食べてしまいます。ヘビやイタチなどの襲撃を受けることもあります。

最も強い天敵は人間ですが高い繁殖力と知能で人間も苦戦しています。

エピソード

鵜の目鷹の目

血眼になって熱心に探す、他人のアラ探しをする意味で使われる諺です。
現在は鷹のほうが鵜よりもカッコいいと肯定的に考えられていますが、以前は狩りの名手として鵜も高く評価されていたことが伺えます。

鷹匠も鵜匠も時の権力者や皇室に仕える重要な立場で、現在も長良川の鵜匠は宮内庁職員という国家公務員です。
鷹匠は宮内庁の鴨場(特別な狩り場)管理人という立場で現存しますが現在は鷹狩りは行わず囲い込み猟で生け捕りにし、生け捕った野生の鴨に足輪をつけて再び放します。
長良川の鵜飼は代々その役に就きますが鷹匠はたまに外部から採用されるそうです。

カワウ戦争~年間被害額は1県だけで2億円以上

高度成長期の時代はカワウにとっても厳しい時代でした。繁殖地の森は切り開かれエサを取る河川は汚染され、どんどん数を減らしてしまいました。その結果2000~3000羽まで数が減り全国3カ所のコロニーでしか見られなくなりました。
しかし河川の汚染対策などが進み保護活動が進むとカワウは急激に数を増やしています。保護活動の成果が出たのは良いですが以前は分布していない場所にも積極的に進出して川や湖で魚を食べ尽くして問題になっています。
カワウは1日250~600gも魚を食べ、しかも魚の種類を選びません。この貪欲な性質を利用して鵜飼いの技術が発達しましたが(日本で現在行われる鵜飼いはウミウだけですが、昔はカワウも使われていました)、養殖場や釣り堀で食べ放題をすると大問題になります。

以前まではカワウがいなかった北関東でも進出が盛んで、茨城県や群馬県で大きな被害を出しています。群馬県では年間2億3千万円の被害が発生し重大な問題になっています。
群馬の上州漁連をはじめ全国の漁連は長らく保護鳥だったカワウの狩猟鳥化を訴え続け、ついに2007年から狩猟鳥に認定されました。
カワウは肉の味が美味しくなく料理に向きません。狩猟鳥としては利用価値が低い鳥です。そのため地元の市役所や漁連などが報奨金を出して駆除を奨励しています。沖縄のハブ駆除のようにカワウも駆除の報奨金として1羽あたり何円かで引き取っている地域もあります。

しかし駆除だけでは数を減らすことができないことが明らかになりつつあります。琵琶湖の竹生島は有名なカワウの繁殖地ですが8割のカワウを駆除しても生息数が全く減らず、むしろ増加したという結果になりました。
繁殖地を潰すと周囲にカワウがどんどん広がってしまい、かえって被害が拡大することも分かりました。

カワウは駆除ではなく「広い範囲で一斉に追い払う」ことが被害をもっとも抑えやすいことが分かりつつあります。
環境省では全国3カ所(関東・近畿中部・中国四国)にカワウ広域協議会を発足し、時期が来ると一斉に広範囲でカワウを威嚇して追い払う活動を行っています。
関東では4月中旬から下旬に行い、約30%のカワウを追い払うことに成功しました。カワウは非常に臆病な動物なので追い払いは高い効果が期待できます。

カワウの被害対策で苦労しているのは日本だけでなく、カワウが分布する国や地域も同様の被害に遭っています。アメリカでは陸軍まで投入して駆除が行われていましたが完全に解決は出来ていません。
カワウやサギの被害対策で大きな鷲の置物を置き、鷹の鳴き声をスピーカーで流して追い払いに成功している養殖所もあります。ドローンや鷹狩の鷹でカワウを追い払うなど複合的な対策で効果が発揮されることが期待できます。

かつては保護されていたカワウ

カワウなど大型のコロニーを作る魚食鳥のフンは良質のリンを豊富に含み、化学肥料が登場するまでは農業にとって無くてはならない良質な肥料でした。
愛知県知多郡ではカワウのコロニーが大事に保護されていました。カワウのコロニーの下に藁を敷いてフンを集め、売ることで大きな収益を上げていました。その資金で小学校を建てた逸話もあります。
カワウのフンで枯れた木は切り倒して木材にし、これも売ることができました。木は再び植樹して森の回復を進め、森の循環に役立ちました。
しかし化学肥料の登場でフンの利用がなくなり、収益にならなくなるとカワウの保護も行われなくなりました。

以前はカワウが鵜飼いに使われていた時代もあり、カワウを捕獲して鵜飼いの鵜に育てることもできます。現在は廃れてしまった「放し鵜飼い」(鵜の首に縄を結びつけるのではなく、鵜を放して自由に魚を取られて自分の意志で鵜匠のもとに帰ってくる鵜飼い)の再生が出来るかもしれません。
漁連にとってカワウ被害は死活問題ですが駆除だけでなく、被害を最小限に食い止めて共存できる方法を編み出すことが急務です。

 

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