鴨の種類や生態、特徴について。狩猟や捌き方、肉の食べ方
2016/12/15
鴨の仲間はグリーンランド内陸部とアフリカ、オーストラリアの砂漠を除く世界中に分布する、適応力に優れた水鳥です。
くちばしは平たく、足には水掻きがあります。胴が長く、皮下脂肪をたっぷりため込み、水に浮きやすい構造になっています。
身は美味しいことでも知られ、太古の昔から狩猟対象にされています。羽も利用され、ケワタガモのように最高級ダウンの原料になる種類もいます。
一般的に「鴨」と呼ばれるのは、カモ科の中でも雁より小さい種類を指す俗称です。
分類上はハクチョウや雁(ガン)、ツクシガモ、アイサ、家禽カモ(アヒルなど)、オシドリも鴨の仲間に含まれます。
特徴
鴨はガンカモ科の中でも比較的首が短く、基本的に冬に飛来する水鳥です。狩猟対象の種類もあり、古代から食用として親しまれています。
離島を除く日本全国に、何らかの鴨が暮らしています。
外見(種類、オス・メス違いなど)
外見は比較的よく似ていますが、羽の色が種類によって全く異なります。特にオスの羽は豪華で美しく、違いがよく分かります。
これはメスへアピールするためと、種類を区別するためです。一方でメスは種族の差が識別しづらく、ハンティングでは苦労するそうです。
日本に飛来する鴨は冬季に繁殖相手を決め、毎年ペアが変わります。そのためオスは冬羽が豪華で、夏羽は地味です。(ふつうは春に繁殖相手を探すため、夏羽のほうが豪華)
オスの地味な夏羽のことは、エクリプスと呼ばれることもあります。姿はメスによく似ているため、判別はますます難しくなります。
日本に飛来したての鴨はエクリプスが多いため、鴨猟をする際は禁漁鴨と勘違いしないようによくよく観察しましょう。
混血種が生まれることも
鴨は水の上で暮らす典型的な水鳥ですが、鴨にとって住み心地の良い場所は限られています。そのため、複数の種類の鴨が一カ所に集中しがち。
そのため混血が起こりやすい問題があります。それを解消するために、羽の色で差別化するように進化しました。
それでも同じような大きさの鴨同士は混血することがあり、奇妙な外見の鴨が見られることも。マガモ×カルガモから生まれるマルガモは特に有名です。
公園の池や川の河口付近、海に浮かんでいることが多く、冬の寂しい公園や海岸を楽しませてくれます。
食性
※お尻を突き出して餌をとる↑
生息地域や餌の取り方が大きく異なり、大きく分けて淡水カモと潜水カモに分けられます。
淡水カモ
淡水カモはマガモ、カルガモ、コガモなどが代表で、主に植物性の餌を採取します。
水辺に浮かぶ餌だけを食べるもの、水中に顔を突っ込んで水底の餌を食べるもの、お尻を突き出して水の中を漁るなど、食事の姿は様々です。淡水カモは基本的に水に潜れません。
潜水カモ
潜水カモは海に暮らし、潜って川底の貝や魚などを捕食します。潜水カモは流線型のスリムな体で、しっぽが長く、潜水に適した姿に適応しています。
餌の食べ方について
カモ類は自ら食べる餌の種類をわきまえ、他の種類の鴨が食べる餌には手を出しません。何でも食べるようになると、他の種類の鴨の生活を圧迫してしまいます。
多くの品種がひしめく鴨たちがお互い生きていくためには、餌を厳密に区別して住み分けるのが一番です。
これは密集した地域で暮らす生物特有の現象で、ガラパゴス島のフィンチ(小鳥)が特に有名です。
寿命
寿命はマガモで20年ほど。大型鳥は長寿の傾向がありますが、鴨は野鳥の中ではかなりの長寿です。
体質について
水面を翼で強く叩いてその場で飛ぶため、滑空しながら空を飛ぶハクチョウに比べると身軽です。
渡りをする前に、肝に栄養をため込んで、一時的に脂肪肝になります。鴨は翼が短く滑空ができないため、渡りには膨大なエネルギーが必要です。そのためには皮下脂肪だけでは足りず、肝臓にも栄養をため込みます。
フォアグラはその習性を利用して作られます。人間が家禽カモのアヒルに無理矢理餌を大量に与えて作りますが、近年の欧州では家畜への虐待と見なされ、残酷だと批判されています。
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狩猟対象の鴨たち
※マガモ↑
日本で狩猟対象にされている鴨は、青首とも言われるマガモ、カルガモ、ヨシガモ、コガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、ハシハジロ、スズガモ、キンクロハジロ、クロガモです。
特にマガモはたっぷり肉が採れ、脂肪にはうま味があります。胸肉はロースに、ネギと煮込んで鍋に、と大活躍します。ジビエ料理の中でも食べやすく、誰にでも喜ばれる食材でしょう。
カルガモも大きな鴨なので、食べごたえがあります。
一方でスズガモ、キンクロハジロなど海で暮らす鴨は、基本的にあまり美味しくないと言われています。
狩猟のルールとマナー
※コガモ↑
日本では冬季が狩猟シーズンです。野鳥は鳥獣保護法で厳重に守られ、狩猟できる場所、時期、猟の道具などが定められています。
鴨猟は1日5羽まで、1シーズン200羽までが上限です。
乱獲で鴨の数が減ると自然界の荒廃に繋がり、環境が悪化します。数を守るのは当然ですが、殺傷する数は必要最低限に留めるのが自然に対するマナーです。
捌き方(さばきかた)
解体と下処理
鴨の捌き方は羽を丁寧に抜き、お尻から切込みを入れて内臓を出し、首を落として完成です。
寸動鍋で大量に湯を沸かし、羽を抜く前に5秒ほど茹でると羽が取れやすくなります。しかし鴨の羽は水をよくはじくので、しっかり湯に浸しましょう。ゴミ袋など大きな袋に羽を入れると、片付けがとても楽です。
内臓を取り出す前に中をよく確認し、寄生虫などがいないか確認しましょう。
捌くときに苦労するのは筆毛(棒毛)です。羽が生える前の状態の羽で、中空の棒状のものが皮に埋め込まれています。
筆毛の中には異臭を放つ脂がたっぷり含まれ、せっかくの鴨の味を悪くしてしまいます。できる限り骨抜きなどで丁寧に取り除きましょう。ナイフなどで切込みを入れると、取りやすくなります。
面倒なので皮ごと処分する方もいますが、鴨の旨さは皮にあるので丁寧に取り除いたほうが、より美味しく頂けます。
エピソード
保護に関する条約について
※オナガガモ↑
日本に飛来する鴨類は、夏はロシアやアメリカなどで繁殖します。そのため、鴨の保護には国を越えて協力しなければ効果がありません。
生息地は年々減少していると言われ、放置していると絶滅のおそれがあります。そのため国際的に鴨類などの野鳥を守る仕組みがあります。
湿地保全の国際条約のラムサール条約、ワシントン条約をはじめ、国家間で交わす条約もあります。
日本ではロシア、中国、アメリカと条約を交わし、日露渡り鳥保護条約、日中渡り鳥保護協定、日米渡り鳥保護条約が結ばれています。日本は未加盟ですが、鳥類を含めた移動性野生動物の保護を目的にした、ボン条約もあります。
(日本がボン条約に未加盟なのは、保護対象にクジラやサメが含まれているため)
昔から食べられていた
※キンクロハジロ↑
鴨(特にマガモ)は古代から狩猟対象で、縄文人の貝塚にもカモの骨がたくさん出土しています。
昔話にもよく登場し、とんち話で有名な吉四六(きっちょむ)話が有名です。
吉四六はケチな庄屋の主人に青首をとらせてやろうと持ちかけます。
庄屋の主人はカモ猟の準備を整えて吉四六の家に行くと、青首を好きなだけ持っていけと青首大根の畑を指さすのでした。
カモネギという言葉がありますが、江戸時代にはネギではなくセリで煮込み、におい消しにしていました。
世界的にも代表的な狩猟動物で、古代エジプトの壁画に鴨の絵が描かれているものがあります。エジプト考古学博物館の「メイドゥームの鴨」は4500年前の壁画とは思えない精緻な描写がされています。
エジプトでは鴨は高級食材で、鴨で客人をもてなすことは最上級のおもてなしとされています。
古代エジプトでは、鴨は神聖な動物と考えられていました。現在もナイル川のデルタ地帯に飛来する、貴重な狩猟鳥です。
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