動物JP

日本に生息する動物を中心にお馴染みのペットなどを紹介

野鳥

子育てしない、カッコウの生態について。托卵で子孫繁栄する生き方

「カッコウの託卵」で有名な鳥で、人間には他人に育児を押しつける悪役のように扱われています。

しかし、毛虫など他の鳥が食べない害虫を食べてくれる益鳥でもあり、美しい鳴き声や勇壮な外見は俳人にも親しまれていました。

不思議な生態を持つ、カッコウはどんな鳥でしょうか。

SPONSORED LINK

カッコウの生態と特徴

生息地

日本では夏鳥で、5月ごろに日本各地に飛来します。
5月ごろになるとカッコウの餌になる毛虫が大量に発生するため、この時期に合わせて飛来すると考えられています。

日本に飛来する個体は、冬は東南アジアやユーラシア大陸で越冬します。ヨーロッパに飛来するカッコウは、アフリカ大陸で冬を過ごします。

本州中部より南では高原などの山地によく飛来します。寒冷な地域は平地でも繁殖することがあります。
全国に飛来しますが、特に本州中部より北に多く飛来すると言われています。

カッコウは自分で子育てをしないため、卵を産めば越冬地に帰ってしまいます。そのため、観察できる期間が短い貴重な鳥です。
現在のところ絶滅の心配はないと考えられていますが、近年、生息数は減少傾向にあります。

体の特徴

カッコウ科カッコウ属の鳥類です。
くちばしの先からしっぽの先まで35cmほど。雌雄の大きさは同じです。
雄は全身が灰色で、お腹に灰色と白の横縞模様があります。雌は赤褐色の個体もいます。
この姿はワシタカ類に擬態していると言われ、託卵する鳥を威嚇する効果があると考えられています。しかし、木に停まる姿は横に長く、背中を立てて停まるワシタカ類とはすぐに見分けがつきます。

鳴き声

カッコウの名は、雄のさえずりが語源です。英語でもCuckooと呼ばれ、さえずりの印象が強いかがわかります。
初夏の高原でカッコウ、カッコウと気持ちよく鳴く姿は、とても爽やかな印象を受けます。俳句の代表的な季語の一つです。

カッコウといったら托卵(たくらん)

カッコウが有名なのは、「託卵」という習性です。
カッコウ科には他にもホトトギス、ツツドリなどがいますが、どの種類も「託卵」を行う習性があります。

カッコウ科の鳥すべてが託卵をするわけではなく、アメリカの砂漠を駆け回るロードランナー(ミチバシリ)など、自力で子育てする種類もいます。しかし、日本に飛来するカッコウ科の鳥はすべて託卵を行います。

なぜ托卵を行うの?

なぜ託卵を行うのかは、現在も解明されていません。しかし、不安定な体温が託卵を行わせているのではないかと考えられています。
カッコウ類は鳥類には珍しく、体温変化の激しい鳥です。鳥類は運動量が激しいため、平温40℃の体温を保っています。しかしカッコウの体温は不安定で、低いときには29℃まで低下してしまいます。
体温が非常に不安定で、自力で卵を暖めることができないために託卵せざるを得なかったという説があります。

対象となる鳥は?

卵を押しつけられるのはオオヨシキリやホオジロ、モズ、オナガなど。虫を食べる身近な鳥であれば何でも良いらしく、オナガは比較的最近に託卵対象に狙われました。

卵の産み方、雛の習性

カッコウの親は、託卵をする巣から卵を一つ奪い、自分の卵を産みつけます。
カッコウの卵は他の雛より少し早く生まれることが多く、他の雛や卵を背中に乗せて、巣から押し出してしまいます。
カッコウは新生雛のころは、背中に触れたものを押し出す習性があります。この習性で他の卵や雛を追い出し、巣を独占します。
しかし他の雛が早く生まれている場合は追い出せないので、みんなで仲良く育つこともあります。

巣を独り占めしたカッコウの雛は、養親からたっぷり食事をもらって育ちます。やがて親の何倍にも成長し、巣からはみ出しそうになるほど成長します。

される側は気づかないのか?

鳥は、口を開けた雛の黄色いくちばしが愛おしくて仕方ない習性があり、奇妙だと思っても雛を放棄することはできないと考えられています。しかし、巣に紛れたカッコウの卵を見破り、これを追い出すことはあります。
中には託卵されたと悟られ、巣そのものを放棄したり、巣の上から新たに巣を作ることも。託される側も必死の抵抗を行います。

食性および餌

虫を好み、特に毛虫を好んで食べると言われています。
他には節足動物、昆虫など。
毛虫は毛が邪魔で、他の鳥はなかなか食べたがりません。そのため、日本の夏は毛虫が大繁殖します。
カッコウ類は豊富にある毛虫を食べるように進化し、エサの不安を解消したと考えられます。

天敵

体が大きな鳥なので、直接命を狙われることは少ないと考えられます。
しかしオオタカ、イヌワシなど猛禽類に襲われることも。

カッコウ最大の天敵は、託卵する鳥たちが自分の卵を見破り、排除される行為です。
自力で雛を育てられないカッコウにとって、騙せないことは自分の子孫を残せないことを意味します。そのため、必死に託卵する鳥の卵に似せた卵を産み、いたちごっこになっています。
近年のカッコウ類の減少は、他の鳥たちの対処法がだんだん上達した現れかもしれません。(越冬地の環境劣化など、他の理由も考えられます)

カッコウの見分け方

日本に飛来するカッコウの仲間は、カッコウ、ホトトギス、ジュウイチ、ツツドリの4種類。
それぞれ特徴のある声でさえずり、すべて鳴き声が名前の由来になっています。(ツツドリは、「ポン、ポン、ポン」と筒を叩いたようなさえずり)
しかし、初めてバードウォッチングをすると、ジュウイチ以外は見分けが付きづらい鳥です。

キジバトより大きければカッコウ、同じくらいならツツドリ、小さければホトトギスと言われています。
拡大して観察できるなら、お腹の横縞(横斑)を確認しましょう。細くて細かい横斑ならカッコウ、太くて粗めなのがホトトギスです。(ツツドリはこの中間くらい)
なかなか見分けるのは難しいですが、経験を重ねることで徐々に区別がつくようになるでしょう。
ジュウイチはお腹が淡いオレンジ色なので、すぐに判別できます。

SPONSORED LINK

-野鳥

合わせて読みたい記事