ホオジロの生態について。体の特徴やオスメスの違い、鳴き声など
2018/01/09
里山でよく見かける野鳥の一種で、雄の頬(ほお)が白く見えるのでこの名がつけられています。
頬が白い動物はとても多く、ホオジロカンムリヅルやホオジロザメ(ホホジロザメ)など様々な動物に名付けられています。その中で「頬白」だけで名が通るほど身近な野鳥と言えます。
スズメのように大きな群を作って飛び回ることはありませんが、数は比較的多くて探せば見つけやすい野鳥です。
ホオジロは遭遇しやすい鳥なので写真や画像、イラストなど多数あります。エナガのような熱狂的人気はないですが誰でも慕われる身近なアイドル的存在です。
ホオジロの生態
分布
東アジア圏に広く分布する小鳥です。シベリア南部、中国の沿海、朝鮮半島、日本などに生息します。
一年じゅう同じ場所で暮らす留鳥ですが、北海道など寒い地域には夏鳥として飛来します。繁殖が終わり寒くなるころに暖かい地域に移動します。そのため北海道では冬に観察することはほとんどありません。
日本国内では北海道から屋久島まで広く分布します。市街地で見かけることはあまりないですが、農地や牧草地などでは観察しやすい鳥です。
農耕地や牧草地、草原、森林の周辺、荒れ地に広く分布します。ホオジロの羽は茶色がメインカラーですが、これは草木や荒れ地の保護色になります。平地から小高い高原まで幅広い場所を住処にします。
特徴
体の特徴
スズメ目ホオジロ科ホオジロ属の鳥で、日本のホオジロはホオジロの標準種です。海外のホオジロは場所により4つの亜種に区分されます。
くちばしの先からしっぽの先まで17cmほど、体重23gほど。スズメとほぼ同じ体重ですがしっぽが長いので大きめに見えます。体型はスズメによく似て、くちばしもスズメほどではないですが比較的太めです。
ホオジロの特徴は名前通り頬の白さです。雄の顔はくちばしの根元から目の下に黒い線があり、その両側を真っ白い毛が覆っています。目の上半分と頬、喉の白さが目立つのでホオジロの名が付きました。
※メス↑
雌は雄ほどはっきりした色合いではなく、全体的に淡い色合いです。色だけならヒバリに近い印象があります。
背中は薄い茶色に濃い茶の斑点があり、お腹は白と淡い茶色がまだらになっています。頭頂はは濃い茶色でショートモヒカンの男性のように見えます。
腰は赤みが強い茶色です。一見すると地味な色合いですが茶色の色彩の豊かさが楽しめる鳥です。
繁殖期によく聞こえてくる鳴き声
4~7月に繁殖期を迎えます。雄は草木の上など(ホオジロにとっては)高い場所に陣取り、盛んにさえずりを行う習性があります。1日で2,000回もさえずると言われ、地域によっては7月下旬ごろまで楽しませてくれます。
ホオジロの鳴き声は特徴的で「ピッピチュ、ピーチュ、ピリチュリチュー」などと鳴きます。聞きなし(鳥のさえずりを人間の言葉に置き換えたことば)では「一筆啓上仕候」(いっぴつけいじょうつかまりそうろう)と呼ばれます。さえずりは方便があり、地域によっては若干異なる鳴きかたをします。
ホオジロの地鳴きはシンプルで「チチッチチッ」と鳴きます。
営巣、産卵、巣立ち
ホオジロの巣は地上や低い木の枝、畑の中などに作ります。枯れ草を組んだ柔らかいお椀型の巣を作ります。一度に3~5個の卵を産み、雌だけが卵を暖めます。
成長は非常に早く、11日で孵化してさらに11日で巣立ちを迎えます。ホオジロの巣は天敵が多い場所なので一刻も早く巣立たないと雛が全滅してしまうからです。
巣立ち後は育児にも余裕ができ、1ヶ月ほど親に養われてから巣立ちします。
俳句ではホオジロ(頬白)は晩春の季語です。ホオジロがさえずるシーズンが春の終わり頃なのが理由と考えられます。
寿命
ホオジロの最長寿命は野生で6.6年です。足輪で判明した
エサ
ホオジロは他の小鳥類と同じく春から夏は虫などの動物性の餌をよく食べます。雛にも盛んに虫を与え成長を促します。
秋から冬にかけては植物の種なども盛んに食べます。
ホオジロのくちばしは程良い太さと長さがあります。小鳥のくちばしは一般的に太いと植物の種など堅いものを食べ、長いと虫などを補食しやすくなります。
ほ乳類は犬歯、臼歯の数で動物性、植物性、雑食性の区別をつけますが鳥類はくちばしの形ですぐ把握できます。
ホオジロのくちばしはスズメに比べると細いのが特徴です。スズメは稲などを食い荒らしますがホオジロはコメほど大きな粒をかみ砕くことはできません。
飼育
昭和の時代まではホオジロを捕獲して飼育する文化が日本にもありました。しかし2012年に施行された「第11次鳥獣保護事業計画」により日本の野鳥の愛玩飼育目的の捕獲は全国一律に禁止されました。
現在もホオジロが飼育されているケースは散見しますが、これらは傷ついた個体を「保護」していることがほとんどです。捕獲飼育は違法ですし、通報されると逮捕されるので絶対に止めましょう。
野鳥の保護も都道府県の環境管理事務所の許可が必要です。
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注意点
森にいるホオジロは時々シジュウカラと見間違うことがあります。シジュウカラも頬が白く、体の大きさもよく似ているからです。
ホオジロやシジュウカラは野鳥図鑑で特徴を掴んでおくと見間違うことが減ります。シジュウカラはお腹にネクタイのような黒い縦線がありますが、ホオジロにはありません。サイズもシジュウカラのほうが小さいので見慣れてくると見間違うこともなくなるでしょう。
仕草でもある程度は把握できます。シジュウカラがときどき行う「両足に(ドングリやひまわりの種など)エサの種を挟んでコツコツつついて食べる」ことはホオジロはできません。
逆にシジュウカラは草原など拓けた場所にはあまり姿を見せません。(木々を伝って拓けた場所に現れることもあります)拓けた場所で見かけた頬の白い小鳥なら、まずホオジロで間違いありません。
冬に地面で餌を漁るホオジロは一見するとスズメのように見えます。ふくよかな丸々した体型、足の長さ、くちばしはスズメそっくりですがよく見ると区別ができます。
スズメのように群れを作らない、まゆが頬が白いところで見分けがつきます。
ホオジロは畑の中で巣を作ってしまうこともあるので、近所でホオジロが盛んにさえずっていたら畑の管理者の方は注意して作業しましょう。
ホオジロの子育て期間は短くすぐに巣立ちます。巣立つまでは周囲に立ち入るのは控えて頂けると環境保全にも役立ちます。ホオジロは害虫をよく食べてくれる益鳥です。
エピソード
瀬戸内ではホオジロを「ショウト」と呼びます。瀬戸内の民話では猿蟹合戦や桃太郎の派生形のような話が残っています。
ショウトがお地蔵様の耳に3個の卵を産みました。お地蔵様に卵の御守をお願いしてショウトは外出したら、その間に鬼に卵を食べられてしまいます。
ショウトはひどく落胆しましたがドングリに励まされ、卵の敵討ちに出ます。道中で蜂やカニ、牛、臼、縄と仲間になり、協力して鬼退治に成功しました。
有名な民話の二次創作のような話は無数にあり、ショウトの鬼退治もそのひとつかもしれません。
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