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エナガの生態と特徴を詳しく。鳴き声、飼育法、エピソードなど

近年、インターネットを中心に認知度が上がっている小鳥がいます。雪だるまのような真っ白な顔と、マシュマロのようなフワフワした体が可愛いと評判のシマエナガです。
シマエナガはエナガの亜種で、日本では北海道から北に生息しています。エナガは顔に太い眉(通眼線)があり、一見すると同じ鳥に見えません。

エナガは日本で2番目に小さな鳥で、その立ち振る舞いは鳥というより大きな羽虫のようです。非常にすばしっこい鳥で、撮影者泣かせの鳥でもあります。
見た目によらず気性が激しい鳥で、人間などが近づいたら集団でツリリリリ、ツリリリリと警戒声を出して威嚇してきます。縄張り争いではエナガ同士が空中で体当たりするなど、アグレッシブな面もあります。
ここでは可愛いだけではない、魅力に溢れたエナガをご紹介します。

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エナガの生態と特徴

生息地

日本では九州から北海道まで分布し、4つの亜種に分かれます。
本州のエナガ、北海道のシマエナガ、四国と九州にいるキュウシュウエナガ、対馬や壱岐、佐渡島などに分布するチョウセンエナガです。
しかし、シマエナガ以外のエナガは外見上ほとんど違いがありません。
正式な亜種ではありませんが、千葉県北西部には眉が薄いエナガが多数確認されています。(詳細は後述)

※シマエナガ↑

世界ではユーラシア大陸の中緯度に広く生息しています。
ロシア、ヨーロッパ諸国(イギリス含む)、中国、トルコなど中東の一部、中央アジアまで分布し、多くの亜種がいます。
しかし、海外でも外見は2つしかありません。南に分布するエナガは黒い眉があり、北に分布するエナガには眉がありません。
大陸の眉なしエナガはコウライシマエナガと呼ばれ、日本のシマエナガの亜種とされています。

エナガは広い森がある場所に生息します。山林や大きな森のある神社、大きな公園などが主な生息地です。
アシ原など、隠れる場所が多い河原をなわばりにすることもあります。
木の種類にこだわりはなく、広葉樹でも針葉樹でも背丈の高い草原でも、身を隠す場所が多ければ問題ないようです。新たに造成したばかりの公園などに住み着くこともあり、適応力は高いようです。

野鳥愛好家の間では以前から人気のある鳥でしたが、なかなか一般の認知度が上がりませんでした。それはエナガの生態があまり人間の目に付かないからと考えられます。
春から秋には木陰や木の梢などで暮らしているので、声はしても姿はなかなか見ることができません。
冬は地上に降りてくることもありますが、エサ台になかなか寄りつかず、たまに気まぐれにやって来る程度です。(中には、エサ台を縄張りにして定期的に来るエナガの群れもいます)
そのため、エナガを観察したいなら、冬がいちばん見つけやすいと言われています。しかし、声を頼りに追いかければ、運が良ければ春や夏でも会うことはできます。

体の特徴

カラス目エナガ科の鳥です。日本ではエナガ科は1科だけです。
くちばしの先からしっぽの先まで14cmほど。体重は平均8gほどの身軽な鳥です。
エナガの特徴は、体の50%以上ある長いしっぽです。まるで神社の手水場などで見かけるひしゃくのように見えることから、ひしゃくの別名の柄長=エナガという名になりました。
外見が特徴的なため、イギリスではスプーン、ロシアでは調理器具の「おたま」と呼ばれることもあります。

よくネットでは丸まった、ぬいぐるみのような可愛い姿のエナガの写真が紹介されています。しかしこれは冬毛で、羽毛を膨らませているだけです。
エナガは比較的スマートな鳥で、春から秋にかけては普通の小鳥くらいにほっそりしています。
くちばしは細く短く、小さな虫や粒のような果実などを食べるのに特化しています。お腹は薄い赤紫色ですが、シマエナガの中にはほとんど真っ白な個体もいます。
背中は黒く、肩口に赤紫色が差しています。しっぽの裏側は黒と白が交差しています。目は真っ黒で、つぶらな瞳と小さなくちばしが非常に愛らしいと評判です。
顔をよく見ると、まぶたが鮮やかなオレンジ色をしているのが分かります。

鳥は体を保護する表の羽(フェザー)と、保温のための下羽(ダウン)があります。エナガの下羽は真っ黒で、水浴びをするとお腹の黒い下毛が丸見えになります。

繁殖について

まずはナワバリ争い

5~十数羽ほどが一つのなわばりを作り、隣のなわばりとは常に抗争しています。
エナガにとって、いかに広いなわばりを獲得するかが繁殖の成功に関わります。繁殖期になると、集団で守るなわばりを小分けして、つがいごとに小さななわばりを作ります。
広いなわばりを維持できた群れは、つがいのなわばりも広くなり、より条件の良い場所に巣を作り、より多くの餌を得られます。そのため、なわばりの境界線ではしばしば、群れ同士の抗争が起こります。
エナガ同士が空中で激突するなど、派手な肉弾戦をすることもあります。

営巣

エナガの繁殖は他の鳥よりも早く、2月ごろには営巣を始めます。
エナガの巣は非常に変わっていて、蜘蛛やガのまゆとコケを編み込み、中に鳥の羽を敷き詰めています。いかにも暖かそうな巣で、触るとフワフワしています。
大きさは中サイズのアップルマンゴーくらいで、コケを貼り付けた外見は木のコブにそっくりです。この中で最大十数羽の雛を育てます。

巣作りは、巣の端に蜘蛛の糸の固まりを置き、短い首を精一杯伸ばして何度も何度も織り込みます。時々お腹で底を押し固め、丸く整形します。
この習性があるため、「巧み鳥」という別名もあります。
外観が完成したら、森じゅうから鳥の羽や動物の毛を集めて、巣の中に敷き詰めます。
卵は日中は雌が暖め、雄はときどき雌に差し入れを持っていきます。(差し入れをしない雄もいます)夜は雄も一緒に卵を暖めます。
エナガは雌雄の判別ができない鳥ですが、この時期は雌のしっぽが曲がってしまうので、雌雄の判別ができます。

孵化~巣立ち

※ヒナ↑

12~14日で雛が生まれ、14~17日で巣立ちを迎えます。とても子沢山で、7~12羽ほどの雛が生まれます。
しかし、エナガの営巣は失敗するケースが非常に多く、群の中で無事に巣立ったのは1つがいだけ、ということも珍しくありません。
そのため、エナガは他の仲間の雛を育てる、ヘルパー制度があります。中にはシジュウカラの雛にエサを与えたケースもあり、種を越えて仲間を育てるという習性があります。
エサは雛の成長に合わせてサイズを変えます。最初はアブラムシなど小さな虫をかき集め、次第に青虫など大きな虫を与えます。
巣立った雛は、枝に一列に並んで身を寄せあいます。これを「エナガ団子」と呼び、愛好家の間では特に人気のある仕草です。
残念ながら、エナガ団子が見られるのは巣立ち後せいぜい数日ほどで、すぐに雛は独立して離れていきます。
幼鳥は、まぶたが赤く、親とすぐに区別ができます。

巣立ち後のエナガの行動は謎が多かったのですが、山奥など人が立ち入らない場所に大きな群れになっていることが分かりました。
やがて秋になり、冬になると、山にいたエナガの群れはふもとに降りてきます。人家の近くになわばりを構えることもあり、いちばん人目につきやすい季節になります。
冬のエサ探しは過酷で、身を隠す葉もなければ、豊富な虫もいません。ふだんは木の梢にいるエナガも地上に降りて、地面の虫や実、人間が捲いたエサなどを食べることもあります。

他の種類の鳥と群れる(混群)

冬は他のカラ類の鳥(シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラなど)やメジロ、コゲラ、キクイタダキと同じ群れになることもあります。「混群」と呼ばれる現象で、種を越えて共同の天敵に対抗するために行うと考えられます。
群の中の誰かが警戒音を出すと、群れ全体が警戒態勢に入ります。
彼らはそれぞれ、同じ木でもエサを取る環境が異なります。エナガは木の端まで止まることができますが、ヤマガラなど大きな鳥は枝でも幹に近い場所でエサを探します。
そのため、エサの取り合いを最小限にすることができます。(それでも、エサや水を巡った小競り合いはよくありますが)

鳴き声

エナガの鳴き声は、地鳴きは「チュリリ」「ジュリリ」、さえずりは「チーチー」「ツリリ」など。
ツプ・・・ツブ・・・と小さな泡が弾けるようなつぶやき声を出すこともあります。
聞こえかたに個人差があるので、動画サイトなどで事前に鳴き声を聞いて覚えておきましょう。
警戒音は「ツリリリリリリリ」で、人間が近づいても同じ鳴き声を出します。

水浴び

エナガは体が小さいため、水浴びも独特です。
雨が降った後や、散水後の水滴が付いた葉に体をこすりつけ、葉水浴びを行うことがあります。
小鳥にとって水浴びは命がけです。地上に降りるだけで多くの天敵に身を晒すことになります。身を隠せる葉で水浴びするのは、エナガの知恵と言えるでしょう。
冬の北海道では、粉雪を浴びる「雪浴び」を行うこともあります。

性格

気性は荒く、なわばりに入ってきたよそ者は執拗に追い払います。
攻撃は戦闘機のようにヒット&アウェイ方式で、足蹴りを加えては遠くの木に移動し、再び体当たりをします。時々、窓ガラスに写った自身を敵と勘違いして、窓に延々と攻撃を加えるエナガもいます。
オスのほうがメスより強く、争いに負けたオスがメスに八つ当たりしたり、なかなか巣に入りたがらないメスを無理やり押し込んだりと、マッチョな面もあります。
メジロのように夫婦で毛づくろいなどは行いません。しかし、夜になると巣の中で夫婦で眠ります。

エサ

小さな虫、虫の卵、小さな果実などを食べます。
特にアブラムシが好物で、木や草に密生したアブラムシのコロニーを見つけると、群れでつついて食べてしまいます。
小さな青虫やシャクトリムシはごちそうで、くわえて枝に叩きつけて、とどめを刺してから苦しそうに丸飲みします。
秋にはムラサキシキブの実を好んで食べます。ムラサキシキブは数ミリほどの紫色の実をたくさん実らせ、エナガを呼び寄せます。
エナガはくちばしが小さく、米粒のような穀物や大きな果実をかみ砕くことができません。そのため、エサ場の地面を漁り、シジュウカラなどが食べ散らかしたヒマワリの種の残骸を食べることがあります。
完熟した柔らかい柿なら食べることができるので、まれに自分より大きな柿の実に止まることもあります。

冬には、木の幹から漏れる樹液も好んで嘗めます。
カエデの木はメープルシロップの原料として有名ですが、豊富なミネラルを含み、栄養価もあります。
冬は樹液が凍ってつららになりますが、つららにしがみついて嘗めるほどの好物ぶりです。

人間が冬場に与える、牛や豚の脂身も好物です。冬はカロリーの高い脂っこい食事を好むようです。
そのためか、人間からエサをもらうエナガの群れは、冬でも羽艶が良い傾向があります。

エナガは非常に体が軽いため、枝の先まで進むことができます。枝の先にぶら下がりながら、器用に小さな虫を食べます。
同じことをしようとしたメジロが、ぶら下がったとたんに慌てふためくこともあります。メジロも日本の鳥の中で3番目に小さな鳥ですが、メジロの体重でも枝にぶら下がってのエサ探しはできません。
足はとても器用で、片足でエサの実を掴み、ぶら下がりながら食べることがあります。

天敵

猛禽類、モズ、カラス、カケスなど、非常に多くの天敵がいます。
特に、卵や雛は多種多様の天敵に狙われます。ヘビイタチ、ノネコなども主な天敵です。
成功率は地域や環境で大きく変わりますが、イギリスの調査では、巣立ちを迎えた巣はわずか17%という結果が出ています。日本では、特にカケスが多い地域は繁殖に失敗しやすい傾向があります。
カラスやカケスは、巣の上から穴をあけて、中の雛を食べ尽くします。イタチは巣の下から攻撃を加えて食べてしまいます。
可愛い鳥ですが、その生態は非常に過酷です。
まれに、蜘蛛の巣に引っかかってしまうエナガもいます。

多くの天敵から逃げられるように、エナガは非常にすばしっこく飛び回る方向に進化しました。目にも留まらぬ早さで飛び回るのは天敵対策の面もあります。

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エピソード

エナガを撮影するには

野鳥を撮影する方にとって、エナガの写真を撮るのは大変な試練です。
非常にすばしっこく、ピントを合わせた途端に逃げられるのもよくあることで、野鳥撮影の中でも難易度はかなり高い鳥です。
エナガは群の中を周遊し、次々と場所を変えてしまいます。「森の妖精」などと呼ばれるのも、現れたと思ったらすぐに消えてしまうのも理由の一つでしょう。

エナガを撮影するなら、下手に追いかけるよりも、待ち伏せて撮影するほうが成功率はいくらか上がります。
エナガの行動範囲を把握できれば先回りして、運が良ければ間近でエナガの撮影ができます。
エナガは動く大きなものは恐れますが、人間そのものはあまり怖がりません。視線もあまり気にならないようで、じっとして見つめていてもあまり気にすることもなくエサを探しています。
いつでも成功できる技ではありませんが、身近で観察したい、撮影したい方にはおすすめの方法です。

千葉県だけに暮らす、謎の「通称チバエナガ」

日本にはエナガは4亜種がいます。しかし、40年ほど前から千葉県北西部では散発的に「眉が薄いエナガ」が見られます。(ここでは通称「チバエナガ」と呼びます。)
眉の部分がまだらで、茶色っぽく見える個体から、ほぼシマエナガに近い個体まで様々です。通常の黒い眉のエナガに混じって群を作り、つがいを形成します。
シマエナガとは異なり、お腹の赤紫色が強く、顔もなんとなく薄汚れたように見える傾向があるのも特徴です。
愛好家の間では以前から知られていましたが、2016年から日本野鳥の会千葉県支部が調査のため情報収集を始めました。

やがては捕獲調査してDNA鑑定を行う日が来るでしょう。新たな亜種として認定されるかもしれません。
鳥は頭が白くなる変異種が生まれやすいですが、それが子孫に受け継がれることはまずありません。なぜ千葉県だけが数十年前から、このような眉の薄いエナガが子孫をつなげているのか。謎の解明はこれからです。
千葉県では、チバエナガと普通のエナガがカップルになることも珍しくありません。

インターネット界隈のエナガ(シマエナガ)人気

シマエナガは今や、ネットで広く知られるようになりました。
ネットで話題になる動物は多いですが、大概は奇妙な外見のものばかりです。ネットは若い人が多いため、奇妙なものに注目が集まりやすいのかもしれません。
その中で「可愛い」だけで注目を集めるシマエナガは驚異と言えます。2011年に「可愛い鳥」として紹介されて以来、徐々に認知度が上がっています。

論文以外の書籍もほとんど出版されていません。現在のところ(2017年5月現在)写真集が2冊(「エナガのねぐら」「シマエナガちゃん」)だけで、マスメディアではあまり話題にはなりません。女性週刊誌で記事になったことがあります。
一方で個人のハンドメイド作家や、同人作家にはよくモチーフにされ、一定の人気があります。日本を飛び出して、台湾のイラストレーターまでシマエナガのイラストを公開しています。(台湾にはエナガはいません)
ゲームセンターの景品にもシマエナガのぬいぐるみやおもちゃが出ることがあります。
女性アイドルがシマエナガを話題にすることもあり、今や完全に現代日本文化の一部に組み込まれています。

特にシマエナガ人気は強く、シマエナガを撮影するために北海道を訪れる方が少しづつ増えています。
もともと観光資源が多い北海道ですが、資源は偏在しています。シマエナガなら大抵の地域で暮らしているので、新たな観光資源として活用されることが期待できます。

エナガの飼育?!

シマエナガをペットにしたい、飼いたい、という声は後を絶ちませんが、当然ながら飼うことはできません。
エナガ(シマエナガ)は野鳥で、勝手に捕まえて飼うと鳥獣保護法に違反します。罰則は厳しく懲役もあるので、保護や研究以外で捕まえることは絶対に止めましょう。
もちろんペットショップでも販売されていません。

エナガは素早く飛び回り、餌の確保も難しい鳥です。保護するにしても生半可な気持ちではとても世話できません。
エナガは野生に生きる姿を愛でましょう。

保護したら

動画投稿サイトでは、エナガを保護した動画がときどき投稿されています。
家のガラス窓に激突して気を失うエナガがいるので、見つけたらすぐに家に入れて箱の中などに入れて保護しましょう。
気絶したまま野外にいると凍死したり、肉食獣やカラスに補食されることがあります。

暖かい場所でしばらく様子を見て、意識が戻れば次の日の朝に野生に戻しましょう。調子が良くならない時は、動物病院や野鳥保護施設に相談しましょう。
いきなり病院に連れて行かずに、事前に電話してから行きましょう。

窓ガラスに野鳥が衝突する被害を防ぐためにも、カーテン(レースカーテンでも可)を引いておくことをおすすめします。

エナガに会いにいくためには

東京などの大都会でも、エナガに会うのは比較的簡単です。必ず会える保証はありませんが、エナガの鳴き声を覚えて、エナガが暮らす場所に何度も行けば、遭遇チャンスは増えます。
明治神宮や大きな公園など、森がある場所には必ずいます。高雄山や多摩川河川敷でも会える可能性があります。
都会にいるとなかなか身近で観察できる鳥ではないですが、探せば観察できる場所はあります。

シマエナガを見に北海道に行く観光客は増えています。
シマエナガがほぼ必ず見れる宿もありますが、エナガはエサ台になかなか寄りつかない鳥でもあります。(個体差はあります)
旅行なら時間が限られているため、必ず見れる宿に泊まるほうが賢明でしょう。札幌などの都会でも観察例はありますが、必ず会える保証はありません。

そして、エナガの巣を観察する際は、カラスなど天敵に悟られないように、できる限り離れて身を隠して観察しましょう。
ただでも狙われやすい巣を天敵に教えているようなものです。絶対に彼らに悟られないように、巣には近寄らず、視線はできるだけ向けず、カメラも隠します。
これだけ注意していても見破られてしまうほど、カラスなどの観察眼は鋭いのです。

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