チドリの生態と種類について
「千鳥足」「千鳥柄」など様々な言葉に残るチドリは海岸や中州を住処にする小鳥です。
チドリの種類はとても多いですが丸い頭と長い胴、脚が比較的長く、くちばしが短めなのが共通した特徴です。
生態
生息地
※イカルチドリ↑
世界中に分布する鳥で、北極や南極を除く世界各地で暮らしています。
チドリの仲間は大きく分けて田んぼなどでよく見かけるタゲリ属(タゲリ属も干潟を好みます)と海岸や河川などで生息するチドリ属、ムナグロ属がいます。ここでは主にチドリ属とムナグロ属について説明します。
チドリは干潟を好み、干潮になると干潟で集団で地面を掘る姿がよく見られます。エサのゴカイや小さなカニを求めて右へ左へとせわしなく歩き回ります。
この不安定な歩き方は酔っぱらった人間の歩き方に似ているので「千鳥足」と呼ばれます。
川の中州や河原など、開けた砂の多い場所を特に好みます。ムナグロ属は田畑に来ることも多く、イカルチドリのように川の上流の石が転がる岸を好む種類もいます。
生息地域は広いですが「地上を歩いてエサを採取する」点は共通しています。
チドリは干潟を代表する鳥類の一種で飛ぶ力が強く、渡りをする種がたくさんいます。
渡りをするコチドリやダイゼンは夏は九州より北の地域で繁殖し、冬になると南西諸島に渡ります。
一年中日本で暮らすシロチドリも北日本で繁殖した個体は秋になると暖かい地域に移動します。
オオチドリは「旅鳥」といい、渡りの途中に日本の干潟で休憩します。春と秋のごく限られた期間だけ観察できる珍しいチドリです。
特徴
※コチドリ↑
チドリ目チドリ亜科チドリ科の鳥類です。
12の属に分かれ、チドリ属やタゲリ属など多種多様の種類がいます。
チドリ属は比較的体が小さく、スズメからムクドリくらいの大きさの種類の鳥がほとんどです。
大きなつぶらな瞳と丸い頭が可愛い鳥で、後ろ足が発達しています。干潟などに降り立ったと同時に走り回るため後趾を発達させ、第1趾(人間の親指にあたる足指)が退化しています。
チドリは多くの種類がいますが比較的よく見かけるのはシロチドリ、コチドリ、ムナグロ、ダイゼンなどです。
どの種類も地面にいることが多いので生息地に行けば比較的観察しやすい鳥です。
チドリは背中側が砂のような薄い灰色で、お腹が白い種類が大半です。(コチドリのように首に黒い輪がある種類もいます)これは保護色で上空から見えづらくする効果があります。
春になると地面に浅い穴を堀り、そこに直接卵を産みます。2個から6個の卵を産んで雌雄交代で暖めます。
チドリのひなはニワトリと同じく、生まれてすぐに歩くことができます。敵に襲われると親鳥は敵の前にケガをしたふりをして現れ、敵の気を引きつけてヒナを逃がします。
「擬傷(ぎしょう)」という行為で地上でヒナを育てる鳥がよく行います。ケガをしたふりをしているだけなので、敵が近づくたびに距離を開けて遠ざかり、ヒナが安全な場所に隠れたのを確認すると飛び去ってしまいます。
翼を広げて中腰になり、脚をひきずり、いかにも大けがをしているような迫真の演技で敵を騙します。
ひながまだ幼いころは、親鳥が羽やお腹にひなを入れて彫誤することがあります。ひなは脚だけ伸ばして羽の間に隠れているので、一見すると奇妙な姿に見えます。
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エサ
※シロチドリ↑
干潟は小さな生き物の宝庫です。干潮にだけ姿を表す干潟には満潮時に海から豊かな栄養が流れ、泥の中には小さなカニなど甲殻類や貝類、ゴカイやヨコムシなどの虫の栄養になります。干潟に生きるチドリたちもこれらをよく食べる姿が見られます。
近年、干潟に生息するチドリやシギ類は泥の表面に集まる目に見えない微生物も食べていることが発見されました。
干潟にはカモメもたくさんいますが、カモメはこれらの小さなエサはあまり食べません。食べる種類を分けることで共存できます。
チドリの「千鳥足」はただ漫然と歩いているわけではありません。視覚が発達したカニなどの捕食動物を欺くために、わざと遠ざかり油断させてから急接近して襲う高度な戦略を行っています。
カニは危険を察知するとすぐに穴に隠れてしまいます。くちばしが短いチドリにとってカニを補食するのは簡単ではありません。そのためカニを騙す作戦に出ます。
油断させたところでカニの後ろから襲いかかり補食します。一見するとフラフラ歩いているように見えますが、高度な駆け引きが行われています。
天敵
ハヤブサなどの猛禽類が主な天敵です。ハヤブサは海岸をなわばりにすることもあり、干潟も守備範囲です。
卵やひなを育てる時期はキツネやノネコなど地上の肉食獣や蛇も天敵になります。地上で生きる鳥なので天敵はほかの鳥に比べて多く、危険に晒されやすい傾向があります。
普段チドリはあまり水には入りませんが傷ついたチドリは水に潜ったり泳いだりして敵から逃れます。
生息状況
開発などで干潟や砂のある河川が激減しているため、近年チドリの数は激減しています。
かつては海の上を無数のチドリが飛び、「千鳥」にふさわしい数が生息していました。しかしシロチドリは激減し、今ではまばらにしか見ることができません。
現在は干潟の重要性が認知され、日本各地で干潟の再生事業が進んでいます。しかしチドリなどの渡り鳥は一つの国だけで再生事業に取り組んでもなかなか成果は上がりません。チドリの数が増えるためには渡りを行う地域すべてで住みやすい環境を取り戻す必要があります。
保護した時は
嵐の後などはチドリやシギなどの海鳥が海岸で傷ついていることが珍しくありません。小さな体で嵐を耐えるのは大変なことで、命を落とすことも珍しくありません。
もし見かけたらタオルなどで優しく包んで保温し、すぐに動物病院や都道府県の環境課に連絡しましょう。病気を持っている可能性があるので、いきなり動物病院に持っていくのは厳禁です。
注意
チドリの繁殖期は春から夏にかけてで、砂の多い河原などで営巣します。
ちょうどキャンプや野外バーベキューにも良い季節なので河原に車を乗り付けることもありますが、チドリの卵やヒナ、親をひき殺すおそれがあります。
出来るだけ河原に車を乗り付けない、乗り付ける場合は最低一人は車から降りて周囲を観察しながら最徐行で誘導しましょう。もしチドリが飛び出して羽をばたつかせたら、その場所からゆっくり遠ざかり別の場所で遊びましょう。
自然には人間が考える以上に多くの生き物がいます。野外で遊ぶ際は出来る限り生き物に迷惑をかけないように心がけましょう。
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