ゴキブリの天敵!飼育もできるアシダカグモ(軍曹)の生態
2021/03/08
家の中に突然現れ、だれかの悲鳴とともにどこかへ消えていく姿を見たことがある人は、きっとクモ嫌いでしょう。
そんなトラウマを作り出すのがアシダカグモです。
クモの種類には造網性と徘徊性(現在は狩猟性と呼ばれる)が存在し、文字通り網をはり獲物をまつタイプと自ら捕まえにウロウロするタイプに分けられます。
前者にはジョロウグモやコガネグモ、後者には紹介するアシダカグモ、ハエトリグモなどがいます。
ただしどちらも糸は出します。徘徊性のアシダカクモがどのように糸を使うかは後で記述するとして、まずはアシダカグモの特徴についてご紹介しましょう。
特徴
生息地
アシダカグモの分布は、割りと温暖な気候に限られます。
暑いのはある程度耐えられますが、寒いとすぐにお亡くなりになります。
特に冬は春を生きて迎えられるかどうかの大切な時期なので、なんとか温かい場所を探して越冬しようとします。
冬に家の中に現れたアシダカグモは暖をとりにきているだけなので、もしよければ泊めてあげて下さい。
思わぬ恩返しがあるかもしれません。
天敵
恩返しなんていらないのでさっさと出てって欲しい方は、その恩返しが何かを知っても同じことが言えるでしょうか。
すでにご存知の方も多いですが、アシダカグモは「あいつ」を捕食してくれます。
名前だけでもおぞましい、黒くて早くてカサカサ言う「あいつ」・・・そう、それはゴキブリです。
ゴキブリ駆除
「ゴキブリ」の天敵とされている生き物がこのアシダカグモです。※軍曹と呼ばれる所以です。
ゴキブリのよい天敵になるためにはいくつかの条件が存在します。
- 行動周期が同じであること。
- 捕食力が強い。
- その他の害が少ないこと。
①は同じ夜行性なのでクリア、②は1匹で数十匹食べるのでクリア、③は見るのが嫌な人がいるので△でしょうか。
ちなみに「ゴキブリ」用の殺虫剤を撒いたとしてもクモはその薬剤を感知し避けます。これもよき天敵となる条件をしっかり満たしています。
台湾で大活躍!
過去に台湾で腸チフスが流行った時、ゴキブリが大量発生し病原菌を広めました。
薬剤でも駆除できないため、とある研究者がアシダカグモ案を政府に提出しました。
そんな簡単に受け入れられる訳もなく、政府は本当に効果があるか実験するよう指示しました。
その結果、アシダカグモの消化液は腸チフスの病原菌を殺菌できること、クモが手足を綺麗にする「化粧」という行為によって、クモは常に清潔に保たれていることがわかりました。
また、クモは食べ物の上を這ったり、飛び回ったりしないので菌を撒き散らす心配もありません。
という訳で、アシダカグモ案が採用され、腸チフス蔓延の食い止めに一役買ったと言われています。
まるでマンガのような話ですが、この話を聞くとクモの見た目なんて気にならなくなりませんか。
なりませんよね。
実際山奥のロッジに泊まった時に、手のひらサイズのアシダカグモが現れたら、パニックになることは間違いないです。ではそんなアシダカグモの生態はどんなものか、簡単に説明します。
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生態
卵や幼体(こども)について
まず卵は軽く数百個産みます。クモの子を散らすという言葉があるように、卵のう(卵を包んでいる膜のようなもの)から出ると一斉に拡散します。
実は、これは孵化ではありません。卵のうの中で子グモ達はすでに孵化しており、かつ1回めの脱皮を行っています。
つまり卵のうから出てきた子グモ達はもはや旅立ちを迎えている事になります。
そこから大移動をするのですが、その方法がなんとも変わっていて、風にのって空を飛んじゃいます。
高い位置まで移動し、お尻を突き出し糸を出します。
長くなるにつれその糸が風に煽られ抵抗を生み、自分の体重より大きな力になると綿毛のように飛ばされます。そうして様々な場所で新しい人生を歩むのです。
また、クモの寿命はオスは5年、メスは7年くらいで長生きすると10年以上になります。
脱皮の回数も生涯で10回以上(MAXは13回)し成体となります。
大きさ
体長はオスが10~20mm、メスが20~30mmぐらいです。そんな小さくなくない?と思うかもしれませんが、あくまで身体のサイズなので脚を広げた状態だと10cm以上になります。大きいものでは15cmにもなるので、アルバムCDとほぼ同じです。
にも関わらず、彼らはとてつもなく早く動きます。八本の脚を巧みに使って昆虫界でもかなり素早い「ゴキブリ」もなんなく捕まえます。パニックになっている内に逃げられてしまうので、どこかに潜んでいる恐怖も嫌われる理由の1つですね。
捕食方法
捕まえた獲物は糸でくるんだりせず、そのままかぶりつきます。
そして体液を吸うのではなく、消化液を分泌します。
つまり中身を溶かしてそれをすすっている訳です。
アルバムCDサイズなので、獲物はそれと同じかちょっとくらい大きくても問題ありません。つまりネズミやカエルなどの小動物ならいけちゃいます。
特に産卵期は食欲旺盛です。なぜなら子どもが孵化するまで母グモは絶食するからで、若いころはすぐに元気になりますが年老いたクモだとその際に命を落とすこともあります。
こうして生涯産卵と脱皮を繰り返して、私達を驚かすあの姿になるわけですね。
最後に余談ですが、奄美大島ではアシダカグモは家の中にいると必ず殺されます。
それはなぜか、アシダカグモはハブの大好物で、クモを求めて家の中に入ってくるそうです。
クモを嫌う理由にも色々あることは面白いです。
データ
和名:アシダカグモ
学名:Heteropoda venatoria
分類:クモ目 アシダカグモ科
分布:本州、四国、九州
発生時期:6~8月ごろに活動が活発になる(産卵期のため)。しかし年中潜んでいる。
捕獲方法:自然の中で探すより田舎の倉庫などに潜んでいる確率が高い。夜に壁に張り付いているので虫網で捕獲可能。かなり素早いので隠れる場所がない広い場所が無難。
飼育方法:ケースは虫カゴなどでOK、日中に隠れるための空間だけつくる。温度は極端に寒くならないように管理。餌は生きている昆虫、身体の大きさに合わせて与える。産卵期は特に多めに。
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